ゴルフ場では隣のホールにボールが飛ぶと「ファー!」 と叫ぶのがマナーと言われています。
対して隣ホールがなく完全なOBのときに、他のプレーヤーがそのかけ声をかけるのは、逆にマナー違反になるのでしょうか。
ここからは、ファーのかけ声の意味と声を出す重要性についてお話します。
ゴルフ規則に定められた安全確認はOBであっても声を発する
打ち出したボールが自分のホールから外れると、例え明らかなOBであっても大きな声で危険を知らせるために「ファー」と叫びます。
中にはキャディがファーと叫んだことで、ヘソを曲げてしまうゴルファーもいるようですが、危険の告知はゴルファーの義務であるとルールブックにも記載されています。
2018年度版までのゴルフ規則には、第1章のエチケットの項に「コース上の心得 安全確認」と言うのがあり、プレーヤーはすぐに大声で危険を知らせるべきだと記載されています。
つまり危険を知らせる義務はゴルファー自身にあるのに、それを怠ったためにキャディがサポートをしてくれたわけです。
それなのに、ファーと言われてプライドが傷つけれられたと思うようであれば、ゴルフをする資格がないと言わざるを得ません。
なぜなら危険の告知はゴルフ規則の最初の「ゴルファーたるべきもの」のエチケットの欄に記載されているのですから、エチケットやマナーを備えていない人は資格を問われても仕方がないということです。
OBはゴルフコースの区域外だから大声で知らせる必要はない?
自分の打ったボールが誰かに当たるかもしれない、そんな危険性がある場合はプレーヤー自身が大きな声で危険を知らせなければなりません。
ただしOBは区域外ですから、そこに人がいるはずはなく、本来はファーと声をかける必要はありません。
ただしゴルフ場のレイアウトによっては、隣接するホールとの間にOB区域を設けている場合があります。
その場合、こちら側からではOBの奥行きがどのくらいかは分かりませんから、初めてのコースであればとりあえず声をかけておいたほうが良いかもしれません。
ケースバイケースなので、プレーヤーが危険を知らせる声を発しなければ、キャディが代わりに知らせてくれるはずです。
しかしながら危険告知はプレーヤー自身が行うものですから、マナーやエチケットの観点からは、告知しないことを恥ずべきものと認識したほうが良いでしょう。
ちなみに自ら発せずに、同伴プレーヤーが大声でファーと叫んだ場合は、キャップのツバを軽くつまんで謝意を示すのもマナーです。
ゴルフの歴史を遡ればOBのボールでもかけ声は必要?
そもそも危険を告知する掛け声が、「ファー」なのかという疑問があります。
ボールの飛来で危険を感じる言葉がファーであると知るのには、それなりにゴルフのことを知っていないとなりません。
ゴルフ規則では「伝統的に使われてきた言葉」とされていますが、意味が通じなければ告知しても相手に伝わることはありません。
日本人の中では、あえてファーと発することよりも、「危ない!」のほうが伝わる確率は高いとも考えられます。
その「ファー」という発声も、正しくは「フォア」だと言う人もいます。
確かに「フォアキャディ」とは言いますが、ファーキャディと発する人を見かけることはありません。
英語では「fore(フォア)」なので間違いではないのですが、ただ日本人にとって、フォアが緊急を知らせるには、緊迫感がないとも考えられます。
このフォアの語源はハッキリしていませんが、最初にフォアキャディ(前方のキャディ)という言葉ができ、そのキャディに向かってボールが飛んだ時に「フォア!」と発したのではないかと言われています。
もしもそれが語源であれば、OBに向かったボールでも「フォア」は必要であることになります。
OB方向のボールにファーのかけ声ではない理由は?
ゴルフボールの飛来を知らせるかけ声は、フォアキャディを語源とするなら「フォア」である可能性が高いと思われます。
これには諸説あるので本当の語源は分かりませんが、このほかにも英国軍が鉄砲を撃つときのかけ声に、前方注意(Be were before)を省略したフォアが使われ、それがゴルフでも使われたと言う説もあります。
いずれにしても「フォア」はゆるぎない言葉のようですが、実はゴルフ規則においては、感嘆符を2つつけた「フォー!!」と記しているのです。
もちろん日本語に訳した人のカタカナ読みを記載したものではありますが、あえてフォーと記載したのには意味があるようです。
日本人が大声で「フォア」と発すると、聞く人には「ホアー」とも聞こえてきます。
この発音だと、前方の人に「whore(売春婦)」と声をかけることになるため、本来の発音と違うフォーとなったのではないかと思われます。
確かにOBに打ち込んでショックなときに、仲間から「whore!」と言われたら立ち直れないかもしれません。
ゴルフ場でファアの声が聞こえたらOB側を向くと安全?
一説によると危険告知のためにフォアのかけ声は、1700年代の前半には使われていたとのことです。
そのころの日本では赤穂浪士のあだ討ちがあり、暴れん坊将軍が江戸の町を探索していたようですが、ゴルフの本場英国ではイングランド王国とスコットランド王国が1つの国になり、英国史上最強とも言えるグレートブリテン王国になった時代です。
そう考えるとフォアが、ゴルフ規則で「伝統的に使われてきている」と言うのも頷ける ので、日本人に馴染みがないとしても合わせるしかないのかもしれません。
言いづらい、聞きにくい言葉であっても緊急告知ですから、声が聞こえたらすぐに身を守るようにしましょう。
手に持っているゴルフクラブを離して、両手で後頭部を抱えるようにします。
声が聞こえてきたほうに振り返ることは危険ですので、声が聞こえてから5秒間はじっとしていましょう。
もしも横にOBゾーンがあれば、そちらからボールが飛んでくることはないので、身体の向きを変えて身構えるようにしましょう。
ゴルフ場での打球事故に備えてOBでも声をかける習慣を!
ゴルフ場でフォアの声がかかるのは、圧倒的にティーショットからのボールです。
飛距離にもよりますが、インパクトして3秒から4秒で着弾するので、声が聞こえてから木の影に隠れるような時間はありません。
もしも打ち終わってから発声を躊躇すると、ぶつかるまでの時間は1秒から2秒程度です。
しかもこの4秒程度の時間は、打ち出し角が良いナイスショットのときのケースなので、ミスショットで曲がったときは3秒以下の場合も多々あります。
そのため行き先を確かめてから声をかけても、相手側は防御する時間がありません。
つまり打ち出す方向が違っていたら、迷わず「ファア!」と叫ぶことが大切です。
ちなみに隣接するホールにボールが飛んで肋骨骨折の賠償金は約200万円でしたが、失明の場合には3500万円の判決があり、死亡事故になれば数千万円を背負い込むことになります。
仮にOB方向へのボールであっても、現行は打ったほうに「注意義務違反」が認定されていますので、最低限フォアによるかけ声と、もしものためにゴルファー保険に加入しておくようにしましょう。
ゴルフ場ではOBでもフォアのかけ声が大事!
ゴルフ規則でも「コース上の心得」として、打球の危険を知らせるフォアのかけ声は、打った瞬間に発することが大切です。
例えOB方向であっても打球事故が発生すれば、打ったプレーヤーの責任になるので、聞こえるように大声で叫ぶようにしましょう。