先輩に連れられて初めてゴルフに行った時のことを、今でも良く覚えている方の多いでしょう。
良くもあんなレベルでコースに出たものだと、その時のことを思い出すと、恥ずかしく感じるゴルファーもいるかもしれません。
腕力は人一倍あると、ドライバーショットは曲がりっぱなしで大変なものです。
毎回OBの連発で、その都度「ファー」という掛け声を出すはめになった先輩に、申し訳なく思えたのではないでしょうか。
初めてのゴルフラウンドの第1ホールで早速OBの連発で掛け声
ここではある男性の初ラウンドの日を振り返ります。
彼がゴルフを始めたのは親しい先輩の誘いがキッカケでした。
最初の頃の練習場では空振りばかりしていたのですが、たまには芯に当たることもあって、その時は驚くほど飛んで、周囲の人たちがスイングを止めて見入ったほどでした。
彼は学生時代に野球をやっていたことから、体格はがっしりとして腕力も強い方です。
練習場では200ヤードの距離に高い網が張られていて、その上部には白い線が引かれています。
その上に当たれば250ヤード以上の飛距離だと書いている状況です。
時々そのラインを越えていたのですから、優に250ヤードは飛んだことになります。
けれども打球の多くは、右に大きくスライスする球筋ばかりでひとつも安定しませんでした。
やはり長年しみついた野球スイングの癖はそう簡単には抜けないようです。
そして真っすぐ飛ぶ確率が半分ほどに上がったことを先輩に告げた時、彼は初めてコースに誘われたのです。
そして1番のティーショットをした瞬間、案の定ボールは大スライスをしてOBの方向へ飛んでいき、先輩は「ファー」という掛け声を掛けたのでした。
初ゴルフの第3打もまたOBを打って「ファー」の掛け声を
人生初めてのゴルフの舞台で、それも出だし早々にOBを出してしまった彼は、苦笑いをしながら打ち直しの第3打のボールをセットしました。
先輩は心配げな顔で見つめていたようです。
今のショットはつい力を入れ過ぎて、身体が開いてしまったのは分かっていたので、次は開かないよう、抑えたスイングをしなければと彼は考えました。
そんな思いが身体の動きを硬くしてしまったのか、今度はぎこちないスイングとなって左に引っ掛けてしまい、ボールは林の中へ飛び込んでしまったのです。
「ファー」と、先輩がまたもや掛け声を上げました。
「力を入れずに軽く振るんだ。」
「小手先で調整せずに身体全体を使って振り切るんだ。」
先輩は少し苛立った口調でそう伝えます。
彼は「そうだ、そうするんだ」と自分に言い聞かせながら、第5打のティーショットを今度は力を抜いてしっかりとドライバーを振ります。
今度は真っすぐフェアウェイにボールは飛んで行きました。
彼はヤレヤレと思いながら、カートに乗り込みます。
その日は先輩と二人だけの2サムのプレーでした。
ゴルフの最中、隣のホールからもOBなのかファーの掛け声
第1打のOBは谷底の池の方に行ったので探すのはあきらめました。
第3打のOBは林の中を少し探してみたところ、結局見つけることはできません。
カートで移動しながら、先輩は何か言いたげな様子でしたが、それを我慢しているようです。
そして彼の黄色のボールが先輩のボールを20ヤードもオーバードライブしているのを見ると、先輩はこう言いました。
「軽く打っても俺より飛ぶんだから、力はいらないんだ。」
「力むからOBになるんだ」と。
そして先輩が第2打のアドレスをした時、遠くから「ファー」という掛け声がしてきたのです。
先輩はすぐにアドレスを解いて、声の方向に目を向けます。
すると少し離れたところにボールが転がってきました。
先輩が再びアドレスして打つのを見ながら、彼は前の組にも自分と同じようなレベルの人がいるのだと感じたのです。
そして彼がアドレスをしようとした時、隣のホールから人が現れ「どうもすみません」と言って帽子を取ると深々と頭を下げられました。
それは年配の男性でした。
それに答えるように、先輩も少し頭を下げて第2打を打ちます。
カートに戻りながら年配の男性を見ると、彼は丁度打ち終えたところで、戻る前に再び礼をして走り去っていきました。
「ゴルフは礼儀とマナーだ。あの人のようにな」
と先輩がそう彼に言いました。
ゴルフでOBを打った時に声に出す「ファー」の掛け声の意味
人生初めてのゴルフの彼は、出だしの1番からいきなり2つもOBを叩いて、先輩に「ファー」の掛け声を出させ、そしてまた隣のコースからも同じ掛け声を聞きました。
そして彼は思ったのです。
そもそもOBを出すとどうして「ファーと言うのだろうか?」
JGA(日本ゴルフ協会)が発行のゴルフ規則を見ると、「fore」の訳を「フォー!!」としているようです。
この「fore」というのは、英語で「前方」という意味で、1880年代からPGAのゴルフ規則にこの言葉が載っています。
ちなみにファーという音だけで想像すると、日本人の中には「far(ファー、遠くに)」と思い込んでいる人もいるかと思いますが、実はそうではないようです。
ちなみに「ホアー!!」という声に近い英語の単語は「whore」というのがありますが、これは「売春婦」という意味ですから、外国人の前では使わない方が良いでしょう。
ではこの「fore」という言葉は、一体どこから生まれて来たのでしょうか。
ちなみに、語源には諸説あるようです。
その中で最も有力とされているのは、英国陸軍が戦いの中で使っていた言葉「beware before(前方注意)」が転じて、こういう言い方をするようになったということのようです。
ゴルフで同伴者の素晴らしいプレーに送る賛辞の掛け声も大切
ゴルフのOBになるような球を打った時は、「ファー」の掛け声を掛けなければいけません。
ただ掛け声ということだけに限ってみると、同伴者の素晴らしいプレーに対して賛辞を表す掛け声というのも、ひとつのモラルとしてはあると思います。
それは例えば、同伴者がティーショットを真っすぐに飛ばした時、同伴者は「ナイスショット!」と声を出します。
また第2打をうまくグリーンに乗せた時は、「ナイスオン!」という声を出します。
そしてグリーン上で長い距離のバーディーパットを沈めた時は、「ナイスバーディー!」と大きな声で称えます。
そしてバーディーやパーのパットでなくとも、少し長めのパットを沈めると、「ナイスパット!」と賛辞を贈るのがエチケットなのです。
このように掛け声を掛けてあげることは、お互いに気持ち良くプレーできるマナーのひとつです。
例えば良いプレーをしたとしても、同伴者が何の反応も示さなければ、その組の雰囲気はきっと気まずいものになるものと思われます。
ゴルフのOBの掛け声を聞いたが不幸にも当たった場合は病院へ
ゴルフでOB性のボールを打った時は即座に「ファー」の掛け声を出して、周囲に注意を喚起しなければなりません。
また前の組が死角に入って見えにくいこともありますので、その場合はカートのナビで前の組の位置を確認するなどして、誤って打ち込まないようにすることが必要です。
ゴルフボールは直径が約43mmで重さは45gと結構重いため、これが高速(時速200kmほど)で当たると、大怪我に繋がることがあるからです。
また危険なボールは自分が打つだけでなく、周囲のプレーヤーからも飛んで来る可能性があるので、「ファー」の掛け声には常に注意を払っておくことが大切です。
もしラウンド中に「ファー」という声を聞いたらカートの陰に隠れるか、あるいは大きな木の幹に身を隠すなど、打球を直接受けないようにしてください。
このようにゴルフのプレー中は、常に細心の注意を払って事故を起こさないように、また事故に遭わないようにすることが大切です。
しかし万が一不幸にも、他人に自分の打球を当てた、あるいは他人の打球が自分に当たった場合は、その位置とその強さにもよりますが、例えばそれが頭部などであれば、即座にプレーを中止して病院へ行くようにしてください。
ゴルフでOBを打った場合は掛け声を出して注意を喚起する
ゴルフの最中に自分の打球はあらぬ方向に飛ぶことがあります。
OB杭を越えて隣のホールに飛び込みそうな時は、必ず「ファー」の掛け声を出して注意を喚起するようにしてください。
またプレー中に遠くから「ファー」の掛け声を聞いた時は、カートや木に身を隠して身を守るようにしてください。
また不幸にも打球を当てた、又は当たった場合は、大事を取って病院へ行くようにしましょう。