一時はゴルフ界で大流行だった長尺パターですが、最近はほぼ見なくなりました。
その理由としてルール改正によって長いパターが使えなくなったと思っているようですが、実際にはそんなことはありません。
パターが使えないのでなく、打ち方に制限が設けられたわけです。
そこで改めて長尺パターとその後継について紹介します。
長尺パターはゴルフ界の救世主だった
ゴルフでもっとも難しいのはパッティングかもしれません。
パー72のうち、規定数の半分の36打はパターのヒット数だからです。
あくまでも規定の打数ですが、ざっくりストロークの半分がパター数ということになります。
グリーンの真ん中にピンが立っていると、グリーンエッジからの距離はわずか20ヤードです。
コースの距離が400ヤードであれば380ヤードを2打で、残りの20ヤードを2打でカップインする計算ですから、距離が難易度の目安としているコースレーティングを考えると、やはりパターは難しいクラブと言えます。
そのように難しいからこそ、色々な弊害が起きてきます。
まずパターのトラブルでもっとも有名なのが「イップス」です。
普通にテークバックしようとしても体が動かなくなり、適当な力で打ち出すこともできなくなります。
そんな時に救世主のように現れたのが長尺パターです。
イップスで悩むゴルファーが、苦もなくパッティングできるだけではなく、長い距離からショートパットまで、簡単にヘッドを動かすことができるようになる代物でした。
長尺パターをゴルフルールで禁止したわけではない!
なぜイップスになったゴルファーが、長尺のパターを使うとヘッドが動くようになるのでしょうか?
実はその正しい答えは、今も見つかってはいません。
推測では、たくさんの理由が述べられていますが、元々イップスの原因自体が、科学的に証明されているわけではないので、原因の分からないものはその対処法も未知ということになります。
ただ長尺パターを使えば、ヘッドが動くことは実証されています。
例えイップスでガチガチになっていても、長尺パターを構えると苦もなくヘッドが動かせます。
学術的には証明されていませんが、ゴルフルールを作る委員会において、長尺パターの禁止が決められました。
実際には長尺パターの使用禁止ではなく、打ち方に問題があるというのが、禁止の理由となります。
パッティングは大きく2つあります。
1つは振り子のようにヘッドを動かすストローク式、もう1つはヘッドを地面と平行に動かすタップ式です。
どちらが正しいパッティング方法なのかは、個々に好みはあり軍配を挙げることはできません。
ただし長尺パターはストローク式で、しかもその打ち方に問題があると言うのがルールを定める委員会の決定事項です。
アンカーリング禁止のゴルフ規則で長尺パターは使えない?
ゴルフルールでは、長尺パターを使用禁止にはしていません。
今でも長尺パターを使うことはできますが、以前と同じ打ち方をすることができないため、多くのゴルファーは違うパターと打ち方を習得することになります。
ゴルフルールでは、「アンカーリング」を禁止しています。
もちろん普通のパターは、アンカーリングをすることはありません。
アンカーリングによって、パターのグリップエンドを身体の一部につけるか、つけた時と同じ効果が得られるパッティングを禁止しています。
グリップエンドを顎や喉または胸など、身体の一部にアンカーリングしてはいけないと規定されたことで、実質上、長尺パターを使用することはできなくなったのです。
それは、長尺パターの特性によるものです。
パターヘッドを振り子のようにした時、通常の長さのパターであればグリップエンドから基点となる顎や首下までに大きな空間があります。
長尺と同じようにアンカーリングしていますが、それは仮想の線で結ばれたアンカーリングなのです。
仮想であれば問題ありませんが、実際にグリップエンドを身体につけてしまう、長尺の打ち方が違反とされたわけです。
長尺パターがゴルフルールで違反となった理由
長尺パターのアンカーリングがなぜ禁止になったのでしょう?
それはゴルフ界の大人の事情もあったようですが、1番の問題は想定していない長さのパターを作り、明らかに有利なパッティングができるようになったからです。
基本的にゴルフクラブは、ドライバーからパターまで両手でグリップを握るものです。
ところが長尺パターの左手は、グリップエンドと身体を密着させるための支点を定めます。
そして右手はパターを推進させる役割を持ち、左手も右手もほかの事は一切しません。
ボールを真上から見ると、アンカーリングしたパターのシャフトは真っ直ぐになっているはずです。
それを後方に引き、そのままインパクトまで押せば、ストロークは完成します。
単純なこのストローク式はイップスの救世主となったのですが、あまりの精度にイップスではないゴルファーまでが使い出したことから、プレーの援助としてアンカーリングを違反としたわけです。
長尺パターの真髄は伝統的なゴルフの打ち方にある!
長尺パターでなくても、振り子のストローク式パッティングはできます。
長尺パターを実質上違反とされたことで、使用していたゴルファーの多くはクロスハンドグリップへと転向します。
通常グリップを握る時は、通常左手を先に握って、次に右手をかぶせていきます。
つまり右手のほうがヘッド側にあると言うことです。
ところがクロスハンドにすると、左手がヘッド側に近づき、右手は推進のための役割をします。
この時左手は左肩に支点を置いて、左手首も曲げず左手甲とフェース面が一対になるようにします。
このパッティングができれば、通常のパターでもアンカーリングした長尺パターと同じ効果を受けることができるのです。
ゴルフルール上から長尺パターは実質使えなくなり、左肩・左腕、左手甲、シャフトの4つが一対となった振り子は、イップスで悩むゴルファーの期待を裏切りません。
さらにクロスハンドグリップを進化させたクローグリップになると、左手自体がアンカーストロークになっているのではと、疑問が出てくるかもしれません。
長尺パターを使わない人にとっては迷惑なゴルフクラブ?
一世を風靡した長尺パターはゴルフ場から消えます。
アンカーリングが禁止されたことで、長尺パターとしての特性が消されてしまったからです。
一方で「あの長いパターがなくなって良かった」と言う声もあります。
ゴルフカートにはパターだけのボックスが用意されていて、個々のキャディバックから分離しています。
しかし長尺パターは長すぎて、そのパターボックスに入れることはできません。
またセルフプレーでは、同伴プレーヤーがその長いパターを持ち運びすることになることから、イップスに悩みのないゴルファーからは歓迎の声も聞かれたようです。
ルール上の規制を受けていない形状である長尺パターは、使うことに問題はありません。
ただしプロトーナメントとは違い、4人のプレーヤーの共用キャディである場合は、その長いパターは「邪魔な存在」だったわけです。
確かに1組複数人が長尺パターを使うようになれば、キャディの動きも制限されることになりますから、イップス病にかかっていないゴルファーにとってはただの迷惑だったのかもしれません。
ゴルフルールで禁止した長尺パターは復活する?
最近はゴルフで見なくなった長尺パターですが、アンカーリングの禁止が施行されてからは、それまで使っていたゴルファーも違うパターに変更しています。
アンカーリングの是非はともかく、振り子式のパッティングの究極は、見えないアンカーリングですから、いずれ改善する日がやってくるかもしれませんね。