重心距離は、ボールの「捕まり」に重大な影響を与えます。
その中でも重心距離の短いアイアンを使うことで、得られるメリットと逆に気をつけなければならないデメリットがあります。
今回はアイアンの重心距離の役割について紹介します。
重心距離の短いアイアン、どうやったら分かる?
アイアンの重心距離とは、フェース面にある重心点(スイートスポット)とシャフトの中心との距離を数値で表したものです。
一般的に前後のひょろ長いヘッドの場合には重心距離は長くなり、ヘッドが小ぶりな場合には短い重心距離になります。
この重心距離の違いは、インパクトの時のボールの捕まりに影響を与えますが、短いから良いとか長いから良いというものではありません。
ゴルファーによって、重心距離の良し悪しに違いがあります。
ここで大事なことは、フェース面にある重心点を見つけることできるのかと言うことです。
正確な重心点を計算式で割り出すことは困難なので、測定するしかありません。
ただしアイアンの重心点を測定するためには、シャフトからヘッドを外してヤジロベエのようにバランスをとる専用の器具が必要です。
ヘッドの抜き挿しをするだけ費用が掛かることを考えると、メーカーなどが提示している重心点や重心距離を信じるしかなさそうです。
重心距離が短いアイアンが主流ではないのか
重心距離の短いアイアンはヘッドのターンがしやすく、操作性が高いと言われています。つまり球離れが良いので、多種多様な球筋を打つことができます。
一方でヘッドの力が弱くなり、パワー不足になるので、一定以上のヘッドスピードのあるプレイヤーが好むヘッドです。
専門的な表現だと、慣性モーメントはクラブの長さの2乗に比例します。
そのため、重心距離が短い分だけ慣性モーメントは小さくなるので、ヘッドに自由度が増し、細かくコントロールすることができるのです。
簡単にいうと、プロ仕様の小ぶりで薄いマッスルバックのようなヘッドということになります。
ただ現在の主流はプレイヤーがコントロールするのではなく、状況に見合ったクラブを選択し、クラブの性能を信じてショットする時代になってきています。
ショートゲームであれば、56度、58度、60度と想定するアプローチに備えて、クラブ選択をするため、より簡単にショットができるアイアンが人気となっています。
重心距離の短いアイアンをプロが好むのは本当か
クラブの進化によって、誰でもプロ並みのバックスピンを掛けることができるようになりました。
特別な技術は必要なくても、アイアンヘッドを綺麗に入れることができれば、後は勝手にスピンが掛かるようなっています。
敢えて難しいクラブを選択する必要はありませんが、上級者は操舵性の良さから重心距離の短いアイアンを好むようです。
でもその多くはアマチュアゴルファーで、世界で活躍するプロは徐々に簡単に操作できるアイアンを使うようになってきています。
松山英樹プロもキャビティ系も併用していますが、マッスルバックを主に使い、しかも徐々にフェースの大きな、重心距離の長いものになってはきています。
もっとも一般ゴルファーとは比べても仕方のない領域にいるので、世界的な流れに興味を示してきたと言うところかもしれません。
重心距離の短いアイアンは「捕まりが良い」
重心距離の短いアイアンは難しいという説明をしてきましたが、一方で5ヤード・10ヤード刻みの攻めではなく、1ヤード単位でピンポイントに攻めていくゴルフをするのであれば、重心距離の短いアイアンは有利です。
ダウンスイングの時、フェースはネック軸を元にして、オープンからクローズへとターンします。
重心距離が短いほど、このフェースローテーションがしやすくなり、ヘッドコントロールも容易にできるようになります。
スイートスポットに当てることさえできれば、上級者でなくてもヘッドを走らせながらボールコントロールができるわけです。
このコントロールを簡単にするためには、短い重心距離で重心角が大きい、いわゆる「捕まりの良いヘッド」と言うことになります。
重心角とは、アイアンのシャフトをテーブルに置いて、端からヘッドを下げてフェースが上を向く角度を表したものです。
重心角が大きいほどフェースは上を向き、スイング中は返りやすいヘッドになります。
一般的に初心者や中級者の場合には、重心角が大きく重心距離の短いアイアンを選ぶとスライス防止としても使えます。
アイアンの重心距離が短いと言ってもどのくらいの長さなのか
では実際に重心距離が短いアイアンとは、一体どの程度の長さなのかを確認します。
松山英樹選手が使っているアイアンは、少し長めの重心距離と紹介しましたが、それでも約35ミリです。
一般的に重心距離は34ミリで短いと言われていて、逆に長いと言われるものでも40ミリです。
まさにミリ単位の領域ですから、インパクトでのミートポイントは重要になります。
ちなみに初心者から中級者が打ちやすいと感じるのは、重心距離が43から44程度です。
つまり重心距離が10ミリくらい長くなるので、ヘッドをコントロールして想像する球筋を繰り出すことは不可能です。
スイートスポットに当たれば、後はクラブがボールを運んでくれると言うことになります。
キャリアを重ねていると、自分でボールをコントロールしたいと思うのは当然のことです。
操作性の高い重心距離の短いアイアンを選ぶのは必然なのかもしれません。
重心距離の短いアイアンは上級者オンリーではない!
そもそもアイアンは飛距離を求めるものではなく、キャリーとランを合わせた距離とターゲットが一致するように使うものです。
常に平坦で良いライから打つとは限らず、またターゲットとなるポイント周辺もアンジュレーションがあるかもしれません。
いつも同じ球筋では1ヤード単位で攻めることはできません。
状況に応じて低くて止まるボールや、ロブショットでピンポイントに落とすボールなどを打ち分ける必要があります。
操作性の良い重心距離の短いアイアンは、ミスショットもありますが、それ以上に攻めるゴルフが可能になります。
安全なゴルフを目指すのであれば、ティーショットはすべて5番アイアン、ショートホールは2オン狙いで、絶対チャレンジはしなければ80台でラウンドできるはずです。
しかし「そんなゴルフはつまらない」と思うゴルファーが、やがて操作性の優れたアイアンを持つのは当たり前のことかもしれません。
ただし操作性を求めることと、外形が小ぶりなものを選ぶことは違います。
プロや上級者がヘッドの小さなクラブを好むからと、技量に余るアイアンを選ぶと、本来の操作性を得られないばかりか、ミスショットを生むことになります。
重心距離の短いアイアンは決して上級者用ではありません。
重心角を考慮すれば、初心者にこそ扱いやすいクラブのはずです。
重心距離の短いアイアンは初心者向き
重心距離の短いアイアンは操作性の良さから、「上級者向き」と捉えられることが多いようです。
アイアンの操作性に重心距離は重要な役割を持ちますが、重心角を考慮するとスライスしない「初心者に向き」のクラブにもなることを覚えておきましょう。