一般ゴルファーのヘッドスピードは40前後ですが、プロゴルファーになると50を超え、我々ゴルフファンにビッグドライブを見せてくれています。
ただ一定のスピードよりも速いと、スイングを支えるシャフトの性能の限界を超えてしまうようです。
一時はヘッドスピード55をマークした石川遼プロを見ながら、シャフトのマッチングについて考えていきます。
ヘッドスピードが50を超えるとシャフトのマッチングが難しい
一般的なゴルファーのヘッドスピードは40くらいですが、プロゴルファーになると50以上を出す選手もいます。
ところがアマチュアのレベルアップはプロを凌ぐものがあります。
アマチュアでもヘッドスピードが50をマークするプレーヤーが出てきているのです。
ローアマ=トーナメント優勝争いなんて華々しい成績を収め、翌年にはプロで大活躍している選手がたくさん増えてきました。
あの石川遼プロも学生時代にプロトーナメントに出場して、プロ顔負けの飛距離で優勝を飾り、プロゴルファーの道へと進んでいます。
その石川遼プロは飛距離に対して特別な思いがあるらしく、パー5でドライバーが良い位置につけても2オンが可能なら、セカンドを直ドラ(ティーアップしないドライバーショット)で勝負に出るタイプの選手です。
そうしたチャレンジャーなところが魅力的で、多くのファンを魅了していました。
当初「好きなクラブは?」との問いに、迷わず「ドライバー」と答える選手でしたが、今ではランク外になっているかもしれませんね。
現在の不安定なドライバーショット原因は、スイングとシャフトの乖離にあるようです。
ヘッドとシャフトはヘッドスピード50超えに合わせていく
石川遼プロがデビューした頃はまだ高校生でしたから、いくら飛ぶとは言ってもヘッドスピードは50を超えていません。
この頃のスイングは非常にシンプルで、中心軸を保って身体のブレがないため、全身を使って振ってもフェースはスクエアに入っていました。
プロに入って2年目の2009年、念願のマスターズ委員会からの推薦枠で出場しますが、この時は残念ながら予選落ちします。
この頃の石川遼プロの飛距離は290ヤード、ヘッドスピードは50未満だったはずです。
そんな中、世界の一流選手との飛距離の差を埋めなければ、あのグリーンジャケットには永遠に袖を通すことはないと考えて、飛距離アップを最優先にしていったようです。
石川遼プロは飛距離アップ計画通りにヘッドスピードを50にし、その後53、そして55と信じられないぐらいの早さで達成していきます。
ドライバーヘッドやシャフトは、進化していくヘッドスピードに合わせるために、新たなものを慣らしながら、既存モデルで試合に出ている状況が続きます。
日本人プレーヤーとして前人未到のヘッドスピードに達したところで、目標とするマキロイとのプレーが実現します。
結果は「あきらめる訳ではないけど飛距離には限界がある。アイアンの精度で勝負していく」と、ビッグドライブからの撤退を表明するほど打ちのめされてしまったようです。
しかしローリー・マキロイは世界屈指の飛ばし屋ですから、仕方なかったはずです。
ヘッドスピード50超でも飛距離が不満ならシャフトを見直す
そもそも直ドラをするプロゴルファーは稀です。
ヘッドスピードを40台から50台に上げ、さらに55まで引き上げて、それでも尚セカンドショットにドライバーを使わずにいられなかった、石川遼プロの精神状態は破裂寸前の風船のようだったのではないでしょうか。
ところが目標とするマキロイは70%のスイングで、石川プロの100%と同じ飛距離を出しています。
競っていると思っていた相手が、コントロールショットだったことに気がつきショックを受けることになります。
結局天賦の才が飛距離を作ると実感したのでしょう。
飛距離アップよりもアイアンで攻めることを誓うわけです。
でも、いくらアイアンの精度を上げても平凡な飛距離では、アンダースコアを重ねることで達成されるグリーンジャケットに届くことはありません。
すでにスイングはヘッドスピードを55まで上げているのですから、後はヘッドとシャフトを変えて、さらに飛距離アップを望むしか方法はなかったはずです。
ヘッドスピード50を超えると対応できるシャフトがない?
石川遼プロはアマチュアからプロになり、ヘッドスピードが50に到達した頃は、きっとゴルフが楽しかったことでしょう。
アマチュア時代にも、アスリートとしてクラブメーカーから一定のサポートを受けていたとは思いますが、販促効果のあるプロゴルファーになると、アスリートに合わせてクラブ開発が行われるのが通例です。
石川遼プロはアマチュア時代に使用していたクラブを止めて、新たなメーカーと契約を結び、いわゆる石川遼チームの中でヘッドやシャフトのフィッティングが行われたはずです。
それまでは既製のクラブを調整して、自分がクラブに合わせてスイングをしていましたが、新チームは石川遼プロの意向を受けてヘッドは専用のものを作ることになります。
つまりクラブの性能に合わせたスイングから、自分のスイングに合わせたクラブを手にすることができたわけです。
マッチングしたクラブを手にしたことで、ヘッドスピードは進化しますが、ただシャフトについては既存の中から選ぶことになります。
ヘッドスピード50前後であれば対応できるシャフトはありますが、前人未到のヘッドスピード55の石川遼専用モデルはできなかったということでしょう。
シャフトが合わずスイングが崩れヘッドスピード50に逆戻り
石川遼プロは、ヘッドスピードが加速する中、シャフトとのマッチングができていないのですから微妙にタイミングが合わなくなってきます。
潜在能力がとても高い石川遼プロは、その合わないシャフトに対応することはできたようですが、スイング全体のバランスが悪くなり、結果的に対応していた体が悲鳴をあげることになります。
飛距離アップを目的に肉体改造したことでウェイトが上がり、しかも筋肉の鎧は身体の切れを失わせ、すべてのマイナス要因が腰への負担に繋がっていきます。
結局、飛距離アップのための肉体改造を止めざるを得なくなり、しかも腰の不調がスイングを崩してしまうことになります。
ヘッドスピード55を達成したのも束の間のことで、あっという間に50台前後に逆戻りです。
しかもスイングが崩れたことで左右にブレる球筋に苦しめられることになります。
まさに「ニッチモ・サッチモ」いかない状態に陥り、帰国して静養とスイングの見直しを判断することとなります。
ヘッドスピード50を超えてもシャフトに影響されないスイング
現在腰の痛みが再発しないよう、大幅なスイング改造を行っています。
一時は落ち込んでいたヘッドスピードも徐々に回復して、コンスタントに50を超えるようになり、2017年シーズンの後半には53前後までマークしたようです。
以前の捻転を中心としたスイングから、軸を移動するシンプルなスイングに改造したことで、身体への負担は軽減され、見た目でも「楽に振っている」印象が強くなってきました。
世界のトップクラスの選手が行っている、飛球線に対してフェースを合わせてストロークするスイング法なので、若干アップライトなスイングプレーンになり、インパクトのタイミングが悪いと左方向に引っかかることが多いようです。
また右へのプッシュアウトはトップの位置でのクロスシャフトが原因なので、折角スイング改造するのであれば、テークバックのスピードをもっと緩やかにすれば防ぐことはできます。
どちらにしても縦振りに変わったことで、今よりもヘッドスピードが上がったとしても、以前のようにシャフトのマッチングでミスショットが起きる心配はなりました。
後は昔のような勝ち癖が戻れば、グリーンジャケットを目指して石川遼・松山英樹で最終組を回る日も夢ではないかもしれませんね。
ヘッドスピード50超のスイングでもシャフトの心配なし!
一般ゴルファーがヘッドスピード50を超えることは稀ですが、プロゴルファーも55を超えるのは極々稀なことなので、シャフトを合わすことは難しいのかもしれません。
そんな超稀なゴルファー達は、アウトサイドイン気味でフェースを飛球線に沿って振るスイング法です。
石川遼プロがそのスイングを取り入れたということは、グリーンジャケットに向けて再スタートを切ったということです。
これからの彼の活躍に期待したいと思います。