ゴルフのプレイヤーの中では、「ファー」という掛け声がキャディの仕事のように思っている人がいますが、実際にはプレイヤーの責任で危険を知らせることが義務とされています。
そこで知っているようで知らないゴルフ場の打球事故を防ぐ「ファー」の意味と、実際に打球事故を起こした時の対処法について確認していきます。
ゴルフで「ファー」と叫ぶ意味と対処法
ゴルフのティーショットでとんでもない方向に飛んでいき、キャディさんに大声で「ファー!」と叫ばれると、なんとも恥ずかしい思いをするものです。
もっとも危険を知らせるための掛け声なので仕方のないことですが、「あんなに叫ばなくても」と思うこともあるかもしれません。
ただあのファーという掛け声は、本来プレイヤーが発するものです。
自分の打ったボールに対する責任はもちろん打った本人にあるので、キャディが危険を伝えるのはあくまでも補助であり、プレイヤーに叫んで知らせる義務があります。
ちなみに日本人的に発音しやすいので「ファー」と叫んでいますが、本来は「フォアー」です。
フォアーの意味は前方なので、ボールが飛んでいく前方に危険を知らせるために「ゼンポウ!」と叫んでいるわけですね。
前の組に打ち込んだときや隣のコースに打ち込んだときに、声で危険を知らせるための内規みたいなものですが、受けた方にも待ち受けるルールみたいなものがあります。
ボールが飛来してくることを知ったときは、声がした方からボールが飛んできますので、声の方を向いてはいけません。
また危険を感じてうずくまる人がいますが、地面に近い方が危険ですので、頭を地面に近づけない方が良いと言われています。
ゴルフの本場英国で軍隊が「ファー」と叫ぶ本当の意味とは
ゴルフのティーショットで曲がった時に「ファー」と発するのは、危険を知らせるためですが、そもそもの意味は「前方注意」ということです。
ファーは日本人的な発音ですから、海外ではフォアーと発音しなければ、意味が分からず飛んでくるボールの方を向いてしまうかもしれません。
ただ日本人にはファーの方が発音しやすいこと、大きな声が出しやすいこともあって、意味は違うことが分かっていても、各ゴルフ場ではキャディも含めてそのまま使っているようです。
ちなみに「フォアー」の発祥地はゴルフの本場である英国にあります。
もともと英国の軍隊が味方の銃弾に気をつけるよう、前方の兵隊に声をかけたのが始まりとされています。
英国の軍隊では「beware before!」(前方注意)と叫ぶのが決めごとでしたが、実践になると簡単に発音できる「before!」となり、結果的に「fore!」と発音するようになったそうです。
なんとも物騒な成り立ちですが、ゴルフ界でも危険を知らせるという意味でこの掛け声が採用され現在も使われています。
危険とは違いますが「Forecaddie(フォアーキャディ)」は前方のキャディとしてボールの行方を確認するのが役目で、「フォアー」からとったネーミングとされています。
ゴルフ場にはファー以外の意味を知らないプレイヤーがいる
実際に掛け声をかけるのは危険を察知したときですが、ボールの行方に第三者がいるかどうかは分かりません。
そこでプレーするホールからボールが外れて、しかもインプレーになるときには「ファー」と声をかけるのが一般的となっています。
つまりOB方向ではファーは必要ないわけです。
もちろん「ファー」以外の掛け声でも問題はありません。
「危ない!」でも「ボール行くぞー!」でも相手が危険であることを分かれば、どんな言葉でも通じるのであれば問題はありません。
ただしこのケースでは、相手が日本語を理解できることが最低条件になると思います。
もしも相手がその言葉の意味を分からないときには、声をした方に顔を向けてしまい、せっかく知らせたことがアダになるかもしれません。
こういった理由から、できればゴルフの共通語である「フォアー」を使った方が良いと思います。
とは言え、コースレイアウトによっては隣接ホールとの境界が定かでないところがあります。
特にリンクスやリバーサイドなどでは、他のホールのフェアウェイからセカンドショットを打ったことがあると思います。
このようなコースの場合には四方八方からボールが飛来してくるので、「○番ホール・ファー!」というのが慣例になっているところもあるので、コースの状況に応じて危険を知らせることが大切です。
ファーの掛け声はゴルフのマナーに通じる大事な言葉
ゴルフ場のマナーの1つに、他のホールに打ち込んだときの対処法があります。
もちろん打った方は「ファー」の危険を知らせることがマナーですし、アゲンストなど声が届かないようであれば、キャディや同伴競技者も一緒に掛け声をかけてあげると、危険を回避できるかもしれません。
一方で打ち込まれる方は、「ファー」の声が聞こえたら、自分に対するものかを確認するよりも先にとにかく頭を隠します。
一番簡単な方法は両腕で後頭部を隠すか、もしくは手のひらで頭を覆うようにしましょう。
ここで大事なことは木の陰に隠れたときです。
自分の体を樹木で隠すとある程度の打球事故を防ぐことができますが、林のように樹木が密集していると隣の木から跳ね返って「顔面を直撃!」というケースもありますので、木の陰に隠れたときでも顔や頭などを隠すようにしましょう。
ダメなケースとしてはしゃがみ込むことです。
ぶつかる面積が少なくなると思って身を低く屈めるのだと思いますが、その状態でも頭を隠すことになると思います。
ところが手前で着弾し、地面から跳ね返ったボールが顔面を捉えて重傷を負ったケースもありますので、一番大事な首から上を腕で隠すことが大切です。
なお打ち込んだ人は、他のプレイヤーの進行に関係なく、真っ先に打ち込んだ場所に行き、隣接ホールのプレイヤーが安全であるかを確認すべきです。
「失礼しました」「申し訳ございません」と声を掛けること、もちろん帽子を取ることをお忘れなく。
また打ち込まれた人は、ボールを打ち込んだのが故意ではないのですから、大丈夫であったことを知らせれば、意味もなくそれ以上の注意を与える必要はありません。
もしもクラブを持っているようであれば、「よろしかったらお先にどうぞ」と、自分たちのホールの優先権を譲ってあげる寛容な態度をとりたいものです。
ゴルフ場でミスショット!「ファー」のあとに対処すること
ゴルフとは失敗しないようにショットをするものです。
仮に失敗しても「ファー」と掛け声をかけて危険を周知させますが、それでも運悪く飛来したボールが当たった時の処置について確認します。
まずキャディが一緒のときには、クラブハウスとの連絡をキャディに頼みます。
キャディは携帯電話や無線などを使って一番良い方法を選択して、救助してくれるように手配してくれます。
もしもキャディがいなければ同伴プレイヤーに頼んで、クラブハウスに「○番ホールで打球事故です」と伝えてもらい、自力で移動できる場合であっても、とりあえず迎えの車を依頼します。
基本的にコース内は、救急車が必要な事故であっても事故現場まで救急車がたどり着くことはできません。
何らかの方法でクラブハウスまで運び、そこから医師や救急救命士が診断することになるので、治療までにはかなり時間が掛かります。
打球が当たった箇所が首から上であれば勝手に動かすことなく、その場で寝かせて医師の指示に従わなければならない場合があります。
その場合には後方の組に連絡し、そのホールはパスしてもらうようにしましょう。
また首から下であっても重篤な症状になることがあります。
特に心臓周辺の場合には、クラブハウスや茶店などに置いてある除細動装置を持ってきてもらうと安心です。
この間、加害者となった人は、絶対に被害者から離れることなく近くにいることが大切です。
連絡はキャディまたは同伴プレイヤーが行い、救助等はコース側に頼みます。
加害者は介助と救命のために被害者のそばに寄り添うことが大切です。
加害者の意味を理解して救助にあたるゴルフ場内のマナー
打球事故の場合、自分に優先権のあるホールであるかが問題となります。
ショットが曲がることはゴルファーであればだれもが知っていることですが、実際の裁判事例では「ミスショットしたプレイヤーの過失」と判決が出ているので、多くの責任を背負うことになります。
ただし優先権のあるホール、つまり自分のホールに入ってきてぶつかった場合には、「ファー」と声を掛けていれば、基本的に打った人に責任はありません。
このような場合には、ゴルフ場が独自に加入している施設賠償保険で賄われるので、個別対応する必要はなくなります。
隣接コースでの打球事故の場合も、施設賠償保険の適用を受けることができますので、打球事故の軽度に関係なくすぐにプレーを中止し、保険適用の申請を行うことが大切です。
なおぶつけられた人が途中でラウンドを止めた場合、その組のプレー代を支払うのは加害者側と思っていた方がいいでしょう。
これまで隣接コースの打球事故を説明してきましたが、実はゴルフ場でもっとも多いのは同伴プレイヤーが打ったボールとの接触です。
特に多いのがグリーンオンしてグリーンの端で待っているときです。
同伴者がバンカーショットでのトップや、アプローチでシャンクして顔面に被弾する事故が多く、失明などの重大事故の原因となっています。
同伴者の場合には、ゴルフ場の賠償保険だけでの解決が難しいこともありますので、ショットをするときに前方に人がいれば除けてもらうように伝える勇気が大切です。
また同伴プレイヤーが打つ際は意味もなく近づかないようにしましょう。
大声でファーと叫ぶ前にしておく大事なこととは
打球事故を防ぐには曲げないで打つことが一番の解決法ですが、曲がるから面白いのがゴルフというスポーツです。
あらためてファーの意味を理解して、少なくとも前方に人がいるときは打たないようにすることで、未然の事故を防ぐようにしましょう。