現在のゴルフクラブでは、昔では考えられないくらい、ドライバーのヘッドからパターまで色々な素材を使っています。
さらにゴルフクラブには様々な工夫がされていて、そのために使われる素材の種類は驚くほど多岐にわたっています。
ですから、素材に係る知識もクラブの特徴や使い方を知る上で重要になっています。
今回はその中でもチタンとステンレスの違いに注目してみましょう。
ステンレス鋼とチタン合金とは
ゴルフクラブに使われるステンレス鋼と言ってもその中でも様々な種類があります。
17-4PHステンレス-SUS630はピン(Ping)が最初に使用した素材で、キャビティーバックの鋳造アイアンによく使われています。
18-8ステンレス-SUS304は、SUS630同様アイアンによく使われています。
SUS630よりも柔らかい感触が得られ、曲げることも可能な素材です。
最近では”Super Steel”と呼ばれるC450ステンレス鋼が薄いクラブフェースなどに採用されています。
それに加え、最新のステンレス素材では、15-5PHステンレスという鋳造メタルウッドの製造に適した特性を持ち、以前までのスチール・メタルウッドの限界を超えた、大きめのヘッドの製造も可能にしています。
設計の仕方次第では、チタンヘッドの性能をも上回ると言われています。
チタン合金は、主にドライバーのヘッドに使われる素材です。
実は、純粋なチタンは柔らかな素材で、そのままではゴルフクラブの素材としては適していません。
比重は4.42と鉄の7.86よりもとても軽いのです。
ただし、アルミニウムの比重は2.7なので決してゴルフクラブの素材として使われる最も軽い金属というわけではありません。
基本的に、6-4チタンとベータチタンの2種類のタイプの合金として使われています。
FWはステンレスとチタンどっちもある
ドライバーは今やチタンが主流ですが、FWはステンレスやチタン、マレージング鋼など色々な素材で作られています。
ドライバーと同じウッドなのになぜ違う素材を使うのでしょうか。
FWでは素材がドライバーのように素材がチタンよりも、主にステンレス素材が使われます。
ドライバーにチタンが使われる理由は、ステンレスに比べて軽い素材なので、軽いチタンを使うことで大きいサイズにしてもヘッドを軽く作ることができるからです。
しかしFWは、芝から直接打つので大きなヘッドになると芝の抵抗を受けやすくなり、ボールが当てづらくなってしまいます。
適度なヘッドサイズでバランスの良いFWを作るのにチタンを使う必要がないということなのです。
その中でもあえてチタンを使ったFWもあります。
ステンレスのヘッドと同じくらいのサイズで作れば、軽く作れるので、それだけ余剰重量が生まれるからです。
その余剰重量をどこに配置するかによって、捕まりをよくしたり、球を上がりやすくしたりとヘッドの特性を変化させるのです。
ですからあえてチタンを使ったFWは、強い弾道が打てるモデルや、ミスに強いモデルなど、性能を特化させたモデルになっています。
チタンはステンレスに比べ割高な素材なため、チタンFWはその分値段が少々お高めになってしまっています。
FWでパワーが溢れているならステンレス、パワーがないならチタン製
パワー溢れるハードヒッターの方は、ステンレスヘッドのFWに相性の良いモデルが多いです。
前述してきたように、ステンレスはチタンと比べ比重が重いのでチタンヘッドよりはステンレスヘッドの方が重く仕上がっています。
ただ注意して欲しいのが、ヘッドは軽ければ軽いほど良いということはなく、ゴルファーそれぞれに合った重さのものを使うことが大切だということ。
ハードヒッターに丁度良い重さがステンレスヘッドで作りやすく、製造技術の発達により、軽くする必要がなければ、ステンレスの単一素材でも十分に高性能な特性を付けられるのです。
逆にパワーに自信のない方であれば、軽くて楽に飛ばすことが出来る複合素材のヘッドであったり、軽い上に高性能なチタン製ヘッドを使うと良いでしょう。
もちろんパワーがない方でも使えるステンレスヘッドもたくさんあります。
しかし個性の強いヘッドになると、性能を活かしきれない場合があるのでしっかりと試打をして使いこなせるかを確認してください。
またパワー溢れるゴルファーが、複合ヘッドやチタン製ヘッドを使う場合は、重量が軽すぎて性能を活かしきれない可能性があるので注意しましょう。
ステンレスとチタンそれぞれのアイアン
アイアンは素材だけでなく、製造方法など選択肢がたくさんあります。
ステンレス素材であれば鋳造が多いでしょう。
鋳造であれば、フェースを後から付けるなどの加工がよくされるので、複雑な形状を作りやすいです。
ですからいろいろな細工をしてヘッドスピードが遅くても上がりやすいものが出来るのです。
そして、上がりやすいのでストロングロフトにすることもでき、周辺に重量を割り振れるのでスイートエリアを広げることもできます。
また重心距離が長めのものが多いので、ヘッドスピードの遅い人でも十分な衝撃をボールに与えることが可能です。
それからチタン素材のアイアンも鋳造が多いでしょう。
チタンの場合は、ステンレスのボディーにフェースだけチタンというタイプが主流です。
チタンフェースは弾きが良いので、サクッと球から離れます。
しかしその分右に抜けやすいでしょう。
球離れが速い分打感は硬くなります。
ステンレスだけで作るよりも、フェースが軽くなるのでその分周辺や下部に重量を分けられます。
そうすることで、球が上がりやすく、ストロングロフトにでき、ヘッドスピードが遅い人でも飛距離が出しやすいアイアンになります。
ステンレス単一素材よりも自由になる重量が増えるので、より優しいアイアンになります。
素材だけでなく製法につても学ぼう
チタンやステンレスと言った素材について話してきましたが、アイアンを選ぶ際は製造方法にも注目した方が良いです。
アイアンの製法は大きく分けると2種類です。
1つは、「フォージド」と呼ばれる「鍛造構造」です。
これを「軟鉄鍛造」と勘違いしている人が多いです。
あくまでもフォージドとは、素材のことではなく製法のことです。
鍛造とは、素材を熱した後に圧力を掛けて叩いて作る製法です。
鍛造アイアンの特徴は、柔らかい素材で強いと言うところです。
柔らかい素材ということで軟鉄が使われることが多いですが、もちろん軟鉄以外の鍛造モデルもたくさんあります。
もう1つの製法が、「鋳造構造」です。
こちらはフォージドに対して「ダイキャスト」と呼びます。
あらかじめ金型を作っておいて、そこに素材を流し込んで作る製法です。
鋳造アイアンの特徴は、大量生産が可能だということです。
また複数の硬い素材を組み合わせて作れることで、複雑なデザインのものまで作れます。
ステンレスやチタンなどの硬い素材を使ったアイアンが鋳造構造には多く見られます。
鍛造と鋳造のアイアンの特徴
鍛造製法の最大の魅力は、ボールが芯をとらえた時の、なんとも言えない気持ちよさです。
鍛造製法の中でも「軟鉄鍛造」では、鉄の中でも柔らかい軟鉄を使い、その軟鉄を叩いて作るので、密度の濃い鉄になります。
密度の濃い鉄になることで、ショットの際の余分な振動が発生されにくくなるのです。
その結果、芯をとらえた時に余分な振動がほとんど発生せず、気持ちよい打感を得られるのです。
対してステンレスやチタンの鋳造アイアンだと、芯を喰っているのかどうか分かりにくい打感です。
真っ直ぐ思い通りの当たりをしたとしても、それがたまたま上手くいったのか、ちゃんと芯を喰って打てたのか分かりづらいのです。
鍛造製法のアイアンであればそれがハッキリするので、上級者向けとは言われていますが、レベルアップに繋げることのできるアイアンとも言えるのです。
しかし高弾道で飛距離を望む人であれば鋳造アイアンの方が良いでしょう。
鋳造アイアンの方が硬い素材を使っていることが多いので、反発力が高い場合が多く鍛造アイアンよりも飛距離が出やすくなります。
またいろいろな種類の金属を複合して作ることができるので、重心を低くして高弾道のボールを打てるように工夫されていることが多いのです。
選択肢が多いからこそ慎重に
チタンやステンレスなどクラブに使われる素材は昔から考えないほど増えています。
またそれと同時に製法など様々な工夫も施され、性能も年々上がっていってます。
だからこそどのメーカーであっても大差はなくなってきているように感じます。
そうなると自分のスイングとの相性やフィーリングにかかってきます。
ですから、色々なクラブの試打を繰り返し、ショップや工房の人とたくさんコミュニケーションを取る中でしっかりと選んでいくべきです!