プロゴルフ界は相変わらず新しいスター選手が育ち活況のようですが、ピーク時のゴルフ場の市場規模からすると、明らかに下降で推移しているように思えます。
そこでゴルフ場の歴史を振り返りながら、現状を確認して今後のゴルフ界を考えていきます。
先の見えないゴルフ界の市場規模の推移を創世記から確認
ゴルフ界の先行きを短期間で判断するのは難しいものがあります。
近代ゴルフの歴史を振り返ると、少なくとも1600年代にはブームが起きていたようです。
その後、本場英国ではゴルフを興ずることが国益に反すると自粛したり、日本では敵性スポーツとして衰退する時代がありました。
復活の兆しが見えるのは第二次世界大戦が終結してからで、戦争の傷跡をスポーツの世界に持ち込まないことから始まります。
その結果、欧州や米国を中心に世界中に広まり、伝統的な紳士のスポーツでありながら、内心的にエキサイトするスポーツとして一大ブームが起こります。
スポーツとしての魅力もさることながら、市場が成熟していなかったことから、ビジネスとしても投資の対象となっていきます。
資本を持つものは用地を取得して造成し、資本を持たないものは先行販売する会員権によって資金を得て、急激に市場規模を大きく推移していくことになっていきます。
活況に推移する市場規模を支えたのはゴルフ人口ではない?
ゴルフ業界の市場規模拡大は、利用者すなわちゴルファーの増加によって支えられたモノではありません。
もちろんスポーツとしての魅力は十分にありましたが、会員権発行による剰余金目的と、会員権相場の値上がりを目的とした投機としての魅力によるものが大きかったようです。
最たる時期はリゾート法による規制緩和で、多くのゴルフ場が造成され、しかも会員権は1ホール100人以内がリミットと言われた上限をはるかに超えて、18ホールで4000人以上に高額な預託金つき会員権を販売していきます。
当時の世相からすると、全額入会金でも販売はできましたが、入会金は収益なので約50%が税金として徴収され、預託金は預り金なので課税はなかったほうを選んだわけです。
結果的にバブルは崩壊、4000人以上のメンバーでは予約が取れず、約束の10年が経っても返還の目処が立たないことは予想がつきます。
都合良く民事再生法が施行され、経営責任を問われることなく、ゴルフ場は別な資本によって再生されることとなり、市場は急激に縮小しそのまま推移していきます。
市場規模が下降に推移したのはゴルフ場の信用が消えたから
狭い国土の中に2400以上のコースがひしめき合い、しかも会員権相場での被害者意識の強いコアな顧客は離れていく中、疲弊したゴルフ場は金融機関にとってお荷物な存在となっていきます。
すでに造成資金の大半は会員権収入で回収していて、経営悪化後の運転資金の貸し出しに、不良債権化してくることが見える状況でした。
金融機関は多額の引当金を積まなければならず、一斉に債務整理へと動きます。
つまり債権回収機関に残りの債権をタダ同然で引渡して、ゴルフ場との関係を解消していくことを選択したわけです。
債権回収機関は数件のゴルフ場を購入し、新しいオーナーを見つけてバルク(一括)で処理をします。
多くは外資系のいわゆるハゲタカファンドの傘下となって、効率化と集客によって利益が求められる、普通の企業モデルへと生まれ変わることになります。
ゴルフ人口の減少とリゾート法で拡大した市場規模は、バランスが取れずに供給過多に推移し、折りしもデフレの景気動向の影響も受けて、破格のプレー料金のコースが乱立することになります。
ゴルフ場の市場規模の推移を売上額で比較してみる
ゴルフ業界の市場規模が縮小で推移していく中、プレー代のダンピング競争は激化していきます。
すでに会員権販売でコースを維持していく、旧来の経営手法はなくなっています。
もともと多くのゴルフ場では、プレー代等を稼ぐ会社(ゴルフ場)と、会員権を管理する倶楽部に分かれていて、予算執行による経営が行われていました。
年度当初に予算を組み、その予算に対して正しく執行されたかが重要だったわけです。
収支よりも予算執行率を重んじていたのは、会員の年会費を徴収しているためです。
また足りないときは、新規会員を募集してその穴埋めをしてきたので、ことさら収益に固執する必要がなかったのです。
それでもゴルフ業界のピーク時の総売上額は約1兆9600億円もありました。
それがバブル崩壊後、売上額は半額以下の9000億円までに落ち込んでしまいます。
穴埋めをするはずの会員権はもう販売できないよう、法律で定められてしまいます。
他国のゴルフ数と比較して市場規模の推移を確認
日本国内のゴルフ場の総売上が約9000億円だとすると、単純に割り返すと1コースあたりの年間売上は約4億円、1日当たりの売上は約110万円ということです。
机上では降雪地域はもっと少ない額になり、その分だけ雪の降らない地域は多くなるはずですが、実際には首都圏近郊のプレー代が高いため売上額は多く、首都から離れるほど価格は低く売上額も少なくなっています。
まさに斜陽産業の体をなすゴルフ場経営ですが、実はコース数で他国と比べてみると、米国、カナダに次いで第3位が日本です。
最盛期の市場規模からみると200コース以上は減っていますが、それでも1度造ったコースは細々と継続していることが分かります。
金融機関が不良債権と認定して整理した混乱期以降、ゴルフ場にはニューマネー(融資)が入らない時期が続いていても、収益性を求める経営に改善したことから、生き残っていくことができたようです。
ただ新たな設備投資ができないため、償却資産の更新時期がくれば、いずれは残っているゴルフ場の多くも閉鎖に推移していくことになるはずです。
ゴルフ業界全体の市場規模が縮小に推移していく
市場規模がますます縮小に推移しているゴルフ場ですが、劇的に改善できるカンフル剤は見当たりません。
従来からゴルフ連盟や女子プロ協会はジュニア育成に取り組んでいますし、業界団体は女性へのゴルフの啓蒙や高齢者への生涯スポーツなどがすでに実施されていて、拡大するほどの要因は見当たりません。
さらに社会問題となっている高齢者の運転、若年者の車離れによって、車を乗らない世代が拡大していることから、市場規模が縮小していくことが予想されます。
将来的な市場規模の縮小は、ゴルフ業界を支えるゴルフの道具を製造するメーカーや販売するショップ、またゴルフ練習場などさまざまな企業にも影響を与えていくことになります。
これらが縮小していくと急激に裾野は狭くなり、新規のゴルファーが育たなくなっていくでしょう。
また現況をみると、斜陽性が強い状況にありながらも、間接税は1つのサービスに対して利用税と消費税のダブル課税を継続しています。
国が固定資産税や相続税なども含めた抜本的な改善策を講じない限り、さらに市場規模が縮小に推移していくことになるのではないでしょうか。
ゴルフ場の市場規模の推移を握るのは行政
ゴルフの市場規模の推移を現況でとらえるのが正しいのか、平成4年以前もしくは昭和48年以前まで戻したほうが適正数なのかは分かりません。
しかし現況で運営しているゴルフ場には年間4万人の利用者がいますので、経営が成り立つよう国が配慮していく必要があると思います。
少なくともリゾート法を作って奨励した責任はあるのです。