女子プロゴルファーの中には、ゆったりとしたリズムでスイングしているのに、十分すぎるほどの飛距離をもっている人は大勢います。
彼女たちは自分のスイングや体型に合わせて、インパクトゾーンで最大限ヘッドスピードを上げる工夫をしています。
今回は一番遅いリズムでスイングする女子プロを通してヘッドスピードを上げる方法を紹介します。
プロの中で一番遅いと思われる女子プロのヘッドスピード
ヘッドスピードの速さが飛距離を生みます。
その速さがインパクトで強い衝撃を与えることで、ボールは反発して飛んでいきます。
ヘッドスピードが速ければ速いほど衝撃は強くなり、ボールは遠くに飛んで行くわけです。
このヘッドスピードの速さは、ダウンスイングのスピードと関係します。
一般的にスイングはトップからインパクトまで加速していきます。
ダウンスイングが始まるトップの位置の初速よりも、インパクトのときの終速の方がヘッドスピードは速くなっているわけです。
ただ同じスイングスピードであっても、人によってヘッドスピードには違いがあります。その理由は、ダウンスイングでの動きが振り下ろすだけではなく、別な動きで加速させているからです。
例えばゆったりとスイングしている印象が強い宮里藍プロ、彼女のヘッドスピードは40m/s(メートル毎秒)です。
女子プロゴルファーの平均は41m/sですから、宮里プロが一番遅いと言うことではありません。
しかも、この40m/sは平均的な成人男性のヘッドスピードと同じ数値です。
一見するとゆったりと振っているようですが、実はインパクトゾーンで加速していて、別なデータを見るとインパクト後のヘッドスピードはさらに速くなっているそうです。
女子プロの中で一番遅いくらいゆったりとしたリズム
もう少し宮里プロのゴルフ理論から、ヘッドスピードについて考えていきたいと思います。
当時の女子プロ界の主流は、非力をカバーするために体重移動して飛距離を稼いでいました。
しかし基本的に宮里プロのスイングは捻転(回転)を意識したもので、体重移動に対するイメージはないと思います。
スイング自体は非常にシンプルで、テークバックで捻転して、それを開放することでスイングしているわけです。
ただしビギナーゴルファーと違うのは、ダウンスイングが加速していくことです。
インパクトの瞬間が最速になるように振っているため、実際のスイングはフォロースルーが最速になっています。
では、どのようにしてヘッドスピードを加速しているのでしょうか。
そもそもテークバックは、女子プロの中でも一番遅いくらいゆったりとした動きです。
トップの位置は一般の人に比べると高いですが、宮里プロの身長(155センチ)とドライバーの長さ(46.25インチ)ですから、地面からのグリップの高さは同じくらいかもしれません。
その高さからグリップエンドを先頭にダウンスイングしますが、最初は速いスピードで振っているわけではありません。
左手が身体の右サイドまで下りてきたとき、下を向いていたグリップエンドを自分の身体に向けます。
この動きで上にあったヘッドは一瞬にして下に移動することになり、ヘッドスピードは急加速します。
このまま加速した状態で振り切ると、スイング自体はゆったりしているのにヘッドスピードの速いスイングが可能になります。
無駄なスイングで一番遅いはずなのにヘッドスピードが速い!
女子プロの中には他にもヘッドスピードの速い選手がいます。
宮里プロと同じ身長の155センチの横峯さくらプロは、ヘッドスピードが43m/sですから、理論上は宮里プロよりも10ヤード飛ぶことになります。
ただ実際の飛距離(キャリー)は、宮里プロが215ヤード、横峯プロが230ヤードですから、その差は15ヤードあります。
なぜ理論数値よりも飛ぶのでしょう?
横峯プロと言えばテークバックのオーバースイングが有名で、トップの位置でヘッドの先はティーアップしたボールを差すほどです。
慣性モーメントで考えると、彼女のトップから左腕が地面と平行になるまでは無駄な運動になるので、一番遅いスイングになるはずです。
一般的なオーバースイングの特長は、グリップの緩みと左手甲が折れることです。
しかし彼女にはもうひとつ大きな特長があります。
テークバックで体重の大半は右脚に乗り、左足のかかとが浮くほど体重移動しています。ダウンスイングでは右側の体重が一気に左脚に乗り、スタンスの範囲内ですが右から左に中心軸を移動しているわけです。
でもこの体重の移動が5ヤードプラスの原因だと思います。
スイングが一番遅い女子プロでもヘッドスピードが速い理由
一般の成人男性が同じくらいのヘッドスピードなのに、女子プロのほうが遠くに飛ぶのは、どこに違いがあるのでしょうか?
1つは女子プロ同士で比較したことで分かったことでは、スイングの速さでヘッドスピードを上げているのではないと言うことです。
力だけで振り下ろすダウンスイングとは違って、インパクトの威力を増すためにワザを盛り込んでいます。
つまりトップで作られたコックを解くことでヘッドスピードを加速させたり、体重移動によって重心軸を中心、右サイド、左サイドと3軸にする打法など、個々の持ち味に合わせて加速させています。
もちろん、ヘッドスピードを上げるもっとも簡単な方法は、スイングスピードを少しでも速くすることです。
スイングスピードを速くするための練習方法はたくさんありますが、簡単に、しかも効果的な方法は素振りをすることです。
左手でクラブヘッド側のシャフトを持ち、素振りをします。
最初は右側でスイング音が聞こえてきます。
どんどん振り込んでいくと、身体の左側から音が聞こえるようになります。
音がまったく鳴らないのはスイングスピードが一番遅いからです。
右側で鳴っているのはインパクトのときにヘッドスピードが落ちています。
左側で鳴るようになったら、インパクトのときに最速になっているはずです。
女子プロを先生にヘッドスピードを速くする練習法
ヘッドスピードをアップする練習法をもうひとつ紹介します。
それはスピードが一番遅いというより止まるフィニッシュの姿勢を意識してスイングを始めることです。
女子プロの選手はだれもが綺麗なフィニッシュポーズをとっていますが、実はあの姿勢がヘッドスピードの加速に関係します。
最初にフィニッシュの姿勢を確認します。
両目とおヘソはターゲットの方向を向いています。
左腕が肩から一直線になるように脇を空けて、肘から上を真っ直ぐに上げます。
左肘が90度になった状態で、しかも左手甲を折れ曲がらないようにします。
そしてもっとも肝心なポイントは、右足の先がターゲットを向いて、かかとが上がっていることです。
クラブシャフトは首の後ろに付くように地面と平行になるようにします。
この姿勢を取るためには、左手のコックが完成されていること、肩甲骨が背骨側に移動していることです。
フィニッシュでコックができていると言うことは、インパクト後にクラブを引き上げたということです。
またインパクトで外側に移動していた肩甲骨を内側に移動させたことで中心軸を基点に身体が回転したことになります。
ただしフィニッシュポーズでは、焦らずヘッドアップをしないように気をつけなければいけません。
女子プロはゆったりしたリズムでもヘッドスピードは速い
ダウンスイングで一番遅いのはトップの位置からの初動です。
もちろんヘッドスピードが一番速いのはインパクトで後です。
女子プロはスイングスピードを速めることなく、インパクトゾーンで加速させる方法を知っているので、一般男性と同じヘッドスピードでも飛距離を稼ぐことができるわけです。
では一般男性でも、女子プロと同じ飛距離を得ることはできるでしょうか。
それは現在のスイングを少しだけ直せば、飛距離アップすることができるはずです。
まず練習場で女性用(ジュニア用でも可)の柔らかいシャフトのクラブを借ります。
グニャグニャのシャフトを上手に振るためには、力を入れないで、クラブのしなりを感じながらインパクトすることです。
最初はそっと振って、少し慣れたらグリップが左腿に差しかかったときに、左手親指を真っ直ぐにします。
ヘッドが遅れてしなっていたシャフトは、進行方向側にしなりヘッドが先行します。
いわゆるキックした状態で振り抜くことを身体が覚えるまで練習したら、通常のクラブで同じように振ります。
するとゆったりしたスイングで、ヘッドスピードは速くなり、しかもミート率があがるでしょうから、今まで以上の飛距離は期待できるはずです。
女子プロのリズムは参考になる
女子プロのスイングは大変参考になります。
男性ゴルファーであっても、参考にするのであれば女子プロのスイングをチェックしておきたいものです。
特にゆったりしたリズムでヘッドスピードが速い(飛距離のある)選手を注目すると、新たな発見があるはずです。
観るときのコツは、選手と同じ目線で「私ならこう攻める」とマネジメントできれば、さらに飛躍すると思います。