ボールを打ってもらうだけで日銭が入るゴルフ練習場の経営は、ゴルフ好きにとっては魅力的に見えるものです。
そこで練習場業界の現状を確認しながら、年収や利益などの観点から経営を分析して、新規参入の可能性を探っていきたいと思います。
ゴルフ練習場を経営しみたいけれど年収と儲けはどのくらい?
ゴルフ練習場をやってみようかなと、起業を考えたことはあるでしょうか。
考え付いた時点で、すでに遊休地を持っているとしたら、初期投資を少なくして日銭商売ができると考えているのかもしれません。
しかし土地があるだけで、ゴルフ練習場の経営ができるのかは微妙なところです。
まずゴルフ練習場の収入は、入場料と貸し球が主たるところです。
24時間営業することはできないので、時間別収入でみると、打席数が多いほど収入増を見込めます。
一方で、打席を増やすためには、初期投資の設置費用と維持費がかかります。
また受付業務やボール拾い、さらに経理なども含めて人件費もかかります。
このほかにも電気代などのランニングコストも考える必要があるでしょう。
仮に営業が順調であっても、開業時の初期投資を回収するまでには、数年~10数年はかかると思ったほうが良いと思います。
ざっくりした見込みですが、遊休地のほかに初期投資費用をキャッシュで持っていなければ、年収を上回る金利の下敷きになってしまう可能性があるということです。
ゴルフ練習場は経営を維持するほどの年収がない?
ゴルフ練習場の初期投資について、もう少し考えてみましょう。
まずは敷地の確保が必要ですが、これは自己所有の遊休地を使用することにします。
もしも貸地を使用するとなると、わずか数円の貸し球の売り上げを積み上げた年収では、経営を維持することが困難です。
敷地の周りにはボールが出て行かないように、ネットを張らなくてはいけません。
もっとも高額な設備となるのがこのネット施行です。
風速40メートルの強風でも倒れないような支柱を等間隔で立てますが、支柱に足枠をつけて昇り降りができる太さが必要です。
その支柱に高い球筋でも飛び出さないようにネットを張り巡らせます。
ネットは簡単に破れないように太目のタイプを使いますが、不安がる場合には2枚重ねなどの工夫が必要です。
また打席に太陽光が差し込む場合には、遮光ネットを上部に張ることになるので、さらに費用はかさみます。
ネットには大小の的(マト)をつけて目印にするわけですが、あおり止めのステンレスワイヤーを取り付けるアンカーや、照明器具なども施行しておく必要があります。
年収で推測するとゴルフ練習場の初期投資は経営を圧迫する
ゴルフ練習場の初期投資を年収で返済するような計画を立てると、経営が行き詰ってしまいます。
ゴルフ練習場でもっとも大事なのは打席です。
1階打席に練習用マットを敷くとしても整地が必要ですが、それでは利用客のリピートは望めません。
レベルを測ったコンクリート施行をして、打席の底部から自動的にボールが出てくるように、自動アップティを備えなくてはいけません。
ボールを送る設備にボールの使用数をカウントする機械、もちろん打席マットなども施行しなければなりません。
そして練習場用のワンピースボールを、洗い換え分もいれて当日の貸し球数の最低3倍は必要です。
もしも2階建て以上の打席を作るのであれば、建設費が別途かかります。
また打席より先は人工芝かゴムチップで施行し、ボールが落ちるところにはグリーンなどに目標物を作ってボールの回収をしやすくします。
このほかにも受付や事務のための設備や、ロビーやトイレなども含めると、安く見積もっても数億円規模の初期投資が必要です。
ゴルフ練習場の経営を支える年収の主軸は貸し球
いわゆるドライビングレンジと呼ばれる打ちっぱなしのゴルフ練習場は、貸し球だけでは経営が成り立ちません。
初期投資した打席マットは消耗品のように変える必要がありますし、練習ボールも同じことです。
照明器具の球が切れたら、高所作業車で取り替えなければならず、1個交換するのに10万円前後になることもあります。
仮に貸し球1個を10円としたとき、1万個の売り上げが必要と計算できます。
1人あたり100球としたら、10人の利用で電気の球交換1個分です。
ましてボール代の安いところに利用客は流れるので、同業者との価格競争もしていかなければなりません。
長年の営業で設備投資を回収した練習場は、価格破壊的な金額を打ち出してくるため、後続企業は年収で初期投資を回収することは困難な状況です。
そこでゴルファー以外でも利用できる飲食店を併設したり、プロショップ以外にも野菜の特売会を開いたりと、ゴルフに関係しない人達の集客に力を入れています。
こうした収入増によって利益を増やそうとしているゴルフ練習場が増えてきています。
副業の年収がゴルフ練習場の経営をサポートする
ゴルフ練習場の駐車場の1画を月ぎめ駐車場にしたり、カーシェアリングやレンタカーのベースにしたりと、さまざまな工夫によって経営が行われています。
ただ本業の貸し球の売り上げは年々下降して年収は伸び悩み、業界全体では廃業が続出して、現在ではピーク時の40%以下まで練習場は減少しています。
一部では練習場業界の景気回復の兆しも見えていましたが、度重なる自然災害や気象変動などが原因で客足は遠のくばかりです。
日本全国のゴルフ練習場の平均値(概算)をみると、打席数56席、貸し球1球9円、入場料190円、年間来場者72,000人、年収1,000万円、従業員数13人となります。
1,000万円の売り上げであれば、従業員の賃金だけでも一杯いっぱいのはずです。
もしかすると水道高熱費や固定資産税は、経営者の持ち出しになるかもしれません。
もはや経営という観点では成立しない事業モデルになっています。
しかも、この経営スキームには大事なことが先送りされています。
敷地の持ち主が個人や小規模事業者の場合には、相続が発生すると継承は不可能になると言うことです。
相続税を支払うためには廃業するしかなく、ピーク時の60%が廃業した理由の大きな点でもあります。
ゴルフ練習場は年収による経営が見込めないのが現状
広大な敷地が必要な打ちっぱなしのゴルフ練習場は、都市部で経営することは難しくなっています。
年間の売上額が1,000万円から増えて10倍になったとしても、コンビニの年収の半分にも満たない額です。
ただ自己所有の練習場経営であれば、コスト削減や改修施行を遅らせれば、当期の赤字幅は少なくすることができるでしょう。
いわゆる経営努力によって経営者が給与を上げる予定がなければ、なんとか維持することはできるかもしれません。
もっと厳しい環境にあるのがインドアのゴルフ練習場です。
貸し球は時間制になっていて、しかも打席数は限られています。
1時間当たり1,000円で5打席であれば5000円の収入、1日平均3回転として15,000円が日額です。
年間550万円の年収に対して練習場の賃料を考えると、経営が成り立つ可能性はありません。
例えゴルフクラブのメンテナンスやレッスンを受けたとしても、ゴルフ練習場の経営の観点からは難しいことが分かると思います。
では、すべてのゴルフ練習場が立ち行かないのでしょうか?
モデルケースとしては、郊外の原野のような場所に、自分で整地した上に練習場マットを敷き、ロストボールで営業を行います。
ネットやフロントはなく、ボールは籠で渡す旧来の形です。
本物のボールが打てること、コストがかからないこと、人数が増えてきたら打席数は無尽蔵に増やすことができるので、一定の支持を受けることができるはずです。
初期投資をしなければゴルフ練習場の経営は年収で大丈夫?
ゴルフ練習場の経営は非常に厳しく、利益を見込むことは難しいのが現状です。
コストを最低限にしても、年収が増えるわけではありません。
費用対効果を考えると、単体事業としてこれから参入するのであれば、初期投資をかけない起業を模索するしかありません。