世界最古のゴルフトーナメントである「全英オープン」を観たことありますか?
なんと150年以上の歴史を持つ権威あるメジャー選手権です。
スコットランドとイングランド、それぞれ9つのゴルフ場のローテンションで行われるのですが、どのコースもとにかくバンカーが凄いのです。
バンカーが苦手な人が入ったら、もうそれはアリ地獄でしかありません。
世界最古のゴルフトーナメント「全英オープン」
ゴルフのメジャー選手権4大大会は、以下の4つです。
・全英オープン
・全米オープン
・全米プロ選手権
・マスターズ
これらすべてを制することを「グランドスラム」と言います。
その中でも全英オープンは、1860年に第一回大会が開かれてから実に150年以上の伝統を築いてきた世界最古のゴルフトーナメントです。
全米オープンも歴史は長いのですが、それでも全英オープンの方が35年長い歴史を持っています。
あの青木功も全英オープンで2位を記録しおり、その際に最小スコア63を叩きだしています。
しかし2017年に、その最小スコアをブランデン・グレースが62に更新しました。
この大会は全英ゴルフ協会が主催しており、なんとアマチュアも参加でき、プロ・アマ問わず栄光を手に入れられる大会としても知られています。
そしてなんと言ってもこの大会は超難関コースでも有名なのです。
9コースどれも海沿いのコースで、ラフに入ったらボールを見つけるのも苦労するほど長いフェスキューと呼ばれる草が伸びています。
また底深いバンカーは世界で活躍しているプロゴルファーでも、一発で出せないこともあるほど難しいです。
これらのコースを攻略するには体力と精神力、そして知恵の全てが必要です。
全英オープンで登場するポットバンカーとは
バンカーには様々な種類がありますが、皆さんが経験したことにあるバンカーは、浅いフェアウェイバンカーか、深さは様々ですがフェアウェイバンカーよりは深めのガードバンカーではないでしょうか。
全英オープンで登場する特徴的なバンカーはそれらと違い、「ポットバンカー」と言います。
ポットとは英語で深い容器全般のことを意味します。
ポットバンカーとは、小さく、形は丸く、深さが人の背丈かそれ以上あります。
グリーン周りにあるポットバンカーに入るとグリーン上にいる人からはバンカー内の人は見えません。
そしてポットバンカーの壁は垂直になっていることも珍しくありません。
また小さくて深いポットバンカーは、ティーグラウンドからはその存在を確認できないこともあります。
数あるポットバンカーの中でも選手達から最も恐れられているのが、セントアンドリュース・オールドコース17番ホールにあるロードバンカーです。
日本の中嶋常幸プロが出場した際は、そのバンカーから脱出するのになんと4打も費やしたほど過酷なバンカーとなっています。
そんなバンカーが普通のゴルフ場にあったら、バンカーに泣く人が続出すること間違いなしです。
全英オープンで112個のバンカーがあるゴルフ場
全英オープンは9個のコースをローテーションして行われるのですが、その中でも「ロイヤル・アンド・エンシェント」には112個のポットバンカーがあることで有名です。
ですから「ポットバンカーの発祥の地」とも言われています。
1度のラウンドで何回も入るであろう恐怖のポットバンカーには、それぞれ固有の名称があります。
ウォーキンショウの墓、ライオンの口、校長の鼻など、どうやらストーリーを持った名称になっているようです。
このゴルフ場でバンカーがないのは1番と18番ホールだけです。
故に各ホール平均7個はポットバンカーがあることになります。
しかしショートホールに7個もバンカーは作れないので、ショートホールに4つあったとして、各ホール平均8個と言うことになります。
そう考えると入らない方がおかしいような気がしてきます。
実際2000年にタイガー・ウッズは、大会を通して1度もバンカーに捕まらなかったことが話題になりました。
4日間合計448個のバンカーに入ることなく終えたのは凄いことですよね。
世界のプロゴルファーを泣かせたポットバンカー
全英オープンではタイガー・ウッズのように全くポットバンカーに入らないか、もしくは絶対に1打で出すことが優勝の絶対条件となります。
優勝を目の前にポットバンカーから出られずに、勝機を逃したゴルファーたちはたくさんいます。
「ヘル(地獄)」と名の付いたポットバンカーで泣いたのは、ジャック・二クラウスです。
このバンカーの面積は300平方メートルで、深さは4.5メートルと想像するだけでも恐ろしいバンカーです。
メジャーで18勝も挙げた世界のトッププロ、ジャック・二クラウスは、このバンカーに捕まった結果、パー5でなんと5オーバーしたのです。
しかし現在は選手達の飛距離が伸びたこともあり、このバンカーに入る選手はほとんどいなくなっています。
また先に紹介した中嶋常幸が泣いた「ロード」では別の選手も泣いています。
タイガー・ウッズを3打差で追っていたデビット・デュバルは、このバンカーに捕まり、2打で脱出できず、ペナルティードロップを余儀なくされました。
結果8打叩き、優勝争いから完全に脱落してしまいました。
世界のトッププロをも泣かせるポットバンカー、恐ろしいですね。
全英オープンではあるがままの状態を徹底
全英オープンのポットバンカーにはストーリーが本当にたくさんあります。
2012年の全英オープンでは大会前週から雨続きで地面を濡らしていました。
グリーンも重くなり、全英オープン常連組にとっては難易度がかなり下がった状態での大会になりました。
ここで問題になったのがポットバンカーです。
小さく深いポットバンカーは水が溜まりやすく、水捌けも良くないので、コース内のポットバンカーにはいたるところに水溜りができてしまったのです。
そんなコースの状況に対し、場所によってはプリファードライ(悪天候なコース状況等の場合に無打罰でボールを拾い上げて汚れを取り、状況の良い場所にプレースできる)を適用するのか危惧されていました。
しかしそこは世界最古のオープン競技です。
ゴルフの基本である「あるがままの状態でプレーする」と言う原則を守り、どのバンカーもプレーから除外するつもりはないと発表しました。
その結果、水に埋もれた状態でプレー続行する選手は、水切りショット状態でした。
中には1打罰でピンとボールを結んだ後方線上にドロップする処理を泣く泣く受ける選手もいました。
日本でも全英オープンを味わえるコース
残念ながらと言うべきか、喜ぶべきか、ポットバンカーのあるゴルフ場が日本にはありません。
しかし色々な共通点から、少しでも全英オープン気分が味わえる日本のゴルフ場を紹介します。
それは栃木県にある「ニューセントアンドリュースゴルフクラブ・ジャパン」です。
全英オープンを3回制しており、ポットバンカー『ヘル』にも泣かされた経験のあるジャック・二クラウスが設計したゴルフ場です。
設計した本人もこのコースは難しすぎたと言ってしまうほど難易度マックスのゴルフ場です。
栃木県なので海がなくリンクスコースではないのですが、フェアウェイの激しい起伏やグリーンのアンジュレーションは全英オープン並みです。
また名前にも入っているように、セントアンドリュースを意識して作られているので、中にはガードバンカーが6個もある全英オープンさながらのホールもあります。
もちろんバンカーの数は多いですがポットバンカーではありません。
また他にもコース自体の難易度は全英オープンほど高くなくても、海に面しているゴルフ場であれば、海から吹く潮風の影響を受けるので、リンクスならではの雰囲気を味わうことはできるでしょう。
何となく見ていたトーナメントも違って見える
今回、全英オープンのポットバンカーについてお話しました。
全英オープンに限らず、プロのトーナメントで使われるゴルフ場のことを色々と調べてみると、ただテレビで見ているトーナメントも違う視点で見られるようになります。
「こんなコースをプロはこのように攻略してるんだ!」と、コースを理解しているとマネジメントの勉強にもなるはずです。