ゴルフ場の芝が妙に綺麗、緑色の絨毯のようですが、良く見ると着色していることがあります。
そこでゴルフ場が着色する理由と、結果として色が出てしまう現在のコース整備の内容、またゴルフ界の方向性についてもお話します。
ゴルフ場の芝が緑に見えるのは着色しているから?
綺麗に整備しているゴルフ場を例える言葉に「緑の絨毯」があります。
それは芝を刈り込んで、水枯れのないように十分な散水と、綺麗な色が出るように施肥をした結果です。
通常の作業をしていれば、コースの芝は維持できますが、天候不順や病気が発生すると根腐れや芝枯れなどが起きてしまうのも自然ならではです。
こうなると一旦は枯れますが、その後メンテンスをしてダメージのあった箇所を復活させるのが、コース管理者の腕の見せどころです。
ただ枯れた芝を元に戻すためには、相当の日数がかかります。
プレーに支障のない場所であれば、青杭や白線で囲い「修理地」として使用禁止にしますが、プレーに欠かせない箇所であれば、着色してでも使用することになります。
本来は修理地になるべき箇所をそのまま使用しますから、回復が遅れることは間違いありません。
その間、何度か着色を繰り返して、芝の成育を待つことになります。
ただ、着色した芝と本来の芝では色が違うため、違和感がないように、人工的な緑色を全体的につけることになります。
この着色の意味が分からないと、色付けして誤魔化しているのではと、誤解することもあるようです。
芝の着色はゴルフ場のグリーンの境を表すため
ゴルフ場で芝に着色するのは、芝がダメージを受けたことを分からなくするだけではありません。
高麗芝のコースは、冬季になると芝枯れして茶色くなります。
するとティーグラウンドに立った時、フェアウェイとラフの境が分からないため、フェアウェイに着色して狙うべきゾーンを知らせています。
同様にグリーンも境を示して、アプローチで狙える位置を知らせるために着色しています。
現在は冬季でも枯れないベントとの2グリーンが多いので、グリーンに着色しているコースは少なくなっていますが、歴史のあるコースでは、冬季の慣習として緑色にしているところもあるようです。
また雪解けのための融雪剤が池に流れ込む春先や、暑さで池の中からガスが発生する真夏は、池にも青色で着色することもあります。
緑色の芝や青色の池の水がコースのグレードを上げるわけではありませんが、年間を通して同じようなコンディションに近づけようとした、先人の思いを受け継いだ結果と好意的に受け取ってあげると良いのではないでしょうか。
ゴルフ場の芝を着色したのは高速グリーンが原因
オンシーズンでもゴルフ場は芝を着色することがあります。
着色といっても絵の具やペンキのような顔料をつけるのではなく、肥料として散布することで色だしをします。
見た目を重視するのはギャラリーが入るような大会、例えばプロのトーナメントの時などに、事前に肥料を撒いて着色します。
費用もかかることから、基本的にはベントグリーンと周囲のカラーやエプロンなどに散布します。
さらに大きな大会だと、フェアウェイやティーグラウンドなどにも散布することがあります。
そんな芝の色を出すためには、窒素とリンとカリウムを混合した粉を水で薄めて散布します。
ただし混合剤が多すぎると肥料枯れしますし、小まめに散水を行わなければいけません。
また高温ですでに芝や根が弱っている時に、リンを撒くとかえってダメージを受けて茶色くなってしまいます。
この施肥は芝の着色だけではなく、芝自体を強くすることができるため、トーナメント期間中、通常よりも短く刈り込んで水を与えずに、高速グリーンを維持するための栄養蓄積でもあります。
現在のゴルフ場は芝を着色しなくても緑色になる
冬季にゴルフ場の芝が枯れるのは、コースが高麗芝で作られているからです。
従前は着色剤を使って、グリーンやフェアウェイを緑色にしていましたが、現在はオーバーシーダで緑の芝を生やしています。
つまり着色せずに、茶色の芝を緑色に変えているわけです。
多年草の高麗芝は、冬季になると茶色くなりますが、これは気温が下がったことが原因です。
一方でベント芝は、夏季の暑い時に枯れますが、気温が下がると芝は緑色になります。
茶色に枯れている高麗芝の中に、新たにベント芝の種を埋め込みます。
散水と目土を施すと、数日もすると発芽しはじめ、やがて緑色の絨毯ができ上がります。
ただしこのベント芝は、夏季になると枯れてしまうため、常緑ではありません。
しかし根は残るため、数年かけてオーバーシーダを行えば、いずれ冬季も一面緑色の芝が広がることになります。
このような他種目の芝は、すでにグリーンやフェアウェイなどさまざまな場所で行われています。
米国から導入してゴルフ場の芝を着色するようになった
ゴルフ場の芝の上に着色していた時代は、すでに昔のことですが、歴史のあるコースでは「年中行事」にように今も行われています。
ただこの色づけは、コースを良く見せるためのフェイクではなく、プレーをサポートするためのものが大半です。
本場の英国では夏枯れする芝を入れていないため、この着色の技術は米国から導入されたものです。
米国では高麗芝と似ているバミューダ芝が主流なので、地域によっては冬枯れすることがあり、着色してフェアウェイやグリーンを強調していました。
当時の日本もバミューダ芝と似ている高麗芝を使用していたため、同じように着色するようになったわけです。
ちなみに気温が下がると冬枯れすると言われていますが、沖縄のゴルフ場はバミューダ芝を採用しています。
沖縄でも冬季になると冬枯れしますが、その時期には桜も咲いていますので、種の特性なのかもしれません。
ゴルフ場にとって着色しても緑色の芝は大事?
芝が緑色であることにこだわるゴルフ場もあります。
世界NO.1が決まるとも言われるマスターズは、まさに世界のマスターのみを招待する大きな大会です。
マスターズの優勝者にはグリーンジャケットが贈られますが、これほどグリーンの色に固執している大会も珍しいかもしれません。
眠い目を擦りながら、夜中に中継しているマスターズを観ていると、あまりにも綺麗過ぎるグリーンの絨毯に気がつくはずです。
最近は自然の色に近づいていますが、放映するテレビ画像やスチール写真は補正することが条件となっていました。
つまりコースに着色するのではなく、画像を着色することで綺麗に見せていたわけです。
世界中の憧れのコース「オーガスタ」だからこそできることで、一般的なトーナメントでそんな色補正を条件にしたら、大騒ぎになってしまいます。
しかしそう考えると、やはりゴルフ場にとっては芝を着色することは、ゴルファーが思っている以上に重要なことなのかもしれません。
現在のゴルフ場は芝に着色するケースは少ない?
ゴルフ場の芝を着色して緑色にしていても、密集した芝でなかったり、枯れてデコボコしていたりしたら意味がありません。
以前はコースコンディションが悪い時期と解釈していましたが、今はネットを見れば評価はすぐに分かる時代です。
色付けする費用と手間があれば、整備に費やすほうが良いと考えるゴルフ場のほうが多いのではないでしょうか。