テークバックの股関節の働きで位置覚と運動覚の誤差をなくす

最終更新日:2017/10/06

多くのゴルファーはテークバックのときに「肩を十分に回す」ことを意識していると思いますが、実際には左肩の可動範囲は限られていて、身体の他の部分、例えば股関節や内腿などの助けをうけて外転することができています。

そこで今回はこのイメージの誤差を、位置覚と運動覚の観点から考えていきたいと思います。

運動覚の鈍い人は位置覚を理解できず右股関節で回転できない

自分のスイングを動画撮影してみると驚く人が多いようです。

アドレスの姿勢を客観的に感じることはできないので、自分のスイングは脳内のイメージを体感しているにすぎません。
なんとも哲学的な文体ですが、要は自分が考えていたスイングと実際のスイングに大きな誤差があると言うことです。

その原因の中で大事なことは運動によって刺激される感覚、つまり運動覚の働きです。
自分が想像したことを、実現していると思い込んでゴルフスイングをしているのに、実際には実現できていないわけです。

ところが計測タイムなどの客観的な数値がないスイングの場合には、実現していないのに別の要因で失敗していると考えて、本来の修正点とは違うところを直そうとして、負のスパイラルに入り込んでいるようです。

何よりも運動覚の鈍さは、関節などの動きを感じる位置覚に影響してスイングの妨げになっていることもあります。
特にテークバックでの捻転のとき、無理に左肩を回そうとして前のめりの姿勢をとることが多いのですが、実際には右の股関節を後ろに引けば姿勢を保ってトップの位置までグリップを引き上げることができます。

肩を回したいなら右腰を回転させること、つまり捻転とは股関節の動きが重要となります。

位置覚重視のスイングは運動覚に注意して股関節で軸をとる

そもそも位置覚とは、身体の部位が全体的にどんな動きをして、どんな位置にあるかを、脳内で判断する感覚のことです。

つまり自分の目で見えるもので判断することなく、あくまでもイメージでつかんだものとの差異が少ないことがスイングする上で重要なことになります。
細部に分けると「左肩を回す」と考えれば、左の肩を前方に出していくことになりますが、スイングで考えるときには左肩が下がるスイングになるので別な考え方をします。

左肩を沈めることなく回転させるためには、右肩を後ろに引くことです。
右肩を後ろに引けば、確実に左肩は外転して当初の目的を達することができます。

このとき大事なことは運動覚に注意することです。
右肩を引いたときに、身体が起き上がると軸がブレ、結果的には右の股関節の外側に体重(中心軸)が移動してしまい、いわゆるスエーの姿勢になってしまいます。

脳内でイメージした位置覚でスイングすることが、右股関節の外側に身体が流れずに、軸のぶれない運動覚を実現することに繋がります。

運動覚である股関節のパフォーマンス低下を防ぐ位置覚の役割

関節や骨などの身体の中で可動域が制限されているもの、腱や筋肉など日頃の運動やストレッチよって可動域が広がっていくものがあります。

でも実際には年齢や生活習慣などの影響で、運動覚で想像している以上に可動域が狭くなっていることがあります。

自分の身体の調子や運動能力が劣化していても、ピーク時の運動能力を発揮できると考えがちですが、ゴルフに限らずスポーツ全般、もしくは頭脳戦の将棋や囲碁などでも体調が整わないと、よいパフォーマンスはできないのが普通です。
前夜のアルコールや寝不足などもパフォーマンスを低下させ、運動覚を鈍くさせます。
またテークバックで十分に捻転しているつもりが、実際には背後にそっくり返るような姿勢になっていて、その姿勢に気がつかないのは位置覚が合っていないからです。

このような2つの感覚を関節覚ということもあり、特にスイングのときの下半身の動きと上半身の動きが微妙に違う場合、境目になる股関節の関節覚が機能していない可能性があります。

股関節の動きによって位置覚と運動覚を結び付ける

実際のスイングで運動覚を確認してみましょう。

テークバックのとき、上半身は背骨を中心軸に両肩を回転させます。
一般的にはこの状態を「捻転」と呼び、テークバックからトップまでにパワーを溜める役割をしていると言われています。
一方で下半身は、両足でスタンスをとるとインパクトまでは同じところに足を置きます。中には左足踵を浮かせたテークバックや、インパクトの前に右踵を上げてターゲットにつま先を向けているスイングもありますが、基本的には両足で大地を踏みしめます。

ゴルフのスイングとは上半身が回転して、下半身は固定している不自然な状態です。
しかも上半身は前傾しているので、その姿勢で肩を回すとトップの位置では左肩は下、右肩は上にあるべきですが、実際には左肩は右サイドに回り、右肩は背中側に引いています。

この複雑な動きを運動覚が認知できれば、腰の回転によるものであることを位置覚が認知するわけです。
つまり右の股関節の上に軸を移動することで、複雑な身体のねじれが可能になっていると言うことです。

位置覚と運動覚の誤差を埋める股関節の役割とは

スタンスをとって、両腕を真っ直ぐ前に差し出し手のひらを合わせます。
右肘を曲げずに背骨を中心軸に右回転しても、左肩の可動範囲は頑張っても45度程度だと思います。

次に同じ姿勢で右肘を折って左肩を回転させます。
左腕は右サイドに移動することはできますが、左肩は肘を曲げなかったときとほぼ同じはずです。

腕を回したままで、アドレスのときのように身体を前傾します。
イメージしていたよりもグリップとなる手のひらは、低い位置にあるのではないでしょうか。
これが運動覚と位置覚の誤差ということになります。

そこで右の股関節を折るように後ろに引きます。
パンツの右側のポケットにシワが入り折り込まれるように腰を回すと、45度で止まっていた左肩は90度まで回転するようになるはずです。
腰の回転を入れることで運動覚と位置覚の誤差が埋まることになります。

スイングにおいては、両肩、両腰、両足の動きが一体になることが重要となります。

内腿の張りで実感できる股関節のスイング

ゴルフに限らず道具を使ってボールを打つ野球やソフトボールなどでも、「腰を切るように打つ」とか「下半身でボールを打つ」と言われることがあります。

実際のスイングとしては、腿の内側に重心を感じていることです。
例えばテークバックでトップの位置までグリップを引いたとき、脇腹や肩にきつさを感じると思いますが、右腿の内側に負荷がかかっているとは感じていないと思います。
本当は腿の内側に負荷がかかった状態、つまり軸が移動していることを感じていないといけないのです。

そこで股関節の動きによって、位置覚と運動覚を再認識してもらい、内腿の負荷を実感してもらいたいと思います。

クラブを持たず、前述と同じように両手を合わせてテークバックします。
靴を履いていれば、右足の外側にボールを1個入れて踏みます。
室内であれば、3センチ程度の本をボールに見立てて足の外側だけで踏みます。

この状態で股関節を意識してテークバックすると、内腿の負荷が実感できるはずです。
そしてわずかに腰を落とすことで、股関節を回したスイングが可能になることを再認識できるはずです。

位置覚と運動覚を正しく知るためには股関節の動きを知る

「自分のスイングを見てガッカリした」という話を耳にしますが、自分がイメージしていたスイングと、実際のスイングの乖離が大きいときにそう感じるのでしょう。

修正するためには、運動覚と位置覚の関係、またスイングのキーポイントとなるのは股関節の使い方、そして内腿の張りを感じながらのスイングにあることを最初に認識して練習することが大切です。