ブランドを高めるメーカーとユーザーが憧れる品との違い

最終更新日:2017/09/27

ドライバーに限らずゴルフ用品には、ブランド品とメーカー品という2つの名称が使われていますが、それらの違いについてご存知でしょうか。

同一メーカーが作るブランド品と大衆品の違いについて考え、製作に係わる「大人の事情」についても確認していきたいと思います。

メーカー名とブランド名には違いのある場合と同じ場合がある

ゴルフショップの広告を見ると「有名ブランド一掃セール!」「一流メーカーを激安販売!」なんてキャッチコピーを目にしたことはありませんか?

安いだけではなく、新作発表のときやデモ(試打用)クラブなどでも枕詞に使われていると思います。

でも良く考えるとブランドとメーカーも同じではないか、もしくはどう違うのと疑問に思っていることがあるかもしれません。

そこでゴルフ用品のブランドとメーカーの違いと拘り(こだわり)について確認していきたいと思います。

まずはブランドとメーカーの違いについて確認します。

ブランドとは統一した商品群のことで、日本語では銘柄と呼ばれることが多いようです。一方でメーカーは生産者のことですが、メーカー品としてブランドとしての役割を持つものがあります。
例えばキャロウェイはメーカー名ですが、そこから販売されているビッグバーサーはブランド名ということになります。

でもキャロウェイのキャップやウェアもあるので、メーカー名はブランドとしての役割もあるわけです。

同一メーカーのブランドと大衆品に性能の違いはあるの?

ではメーカーやブランドによって性能に違いはあるのでしょうか?

そこでもっとも分かりやすいドライバーで確認してみましょう。

そもそもドライバーは、クラブの中で1番飛ぶクラブです。
シャフトの長さやフェースの角度がほぼ同じであれば、違うメーカーやブランドであってもほぼ同じ飛距離になるはずです。
そうであればセールスコピーで「今までとは違う飛距離が得られる!」といった謳い文句は、ひょっとすると間違いかもしれませんね。

何よりクラブを含む道具には規則による規定があるので、メーカーやブランドが違っても反発係数の最大値は決まっています。
つまり、今まで以上に飛ぶのであれば違反クラブになる可能性が高く、そのドライバーだけが飛ぶというのはあり得ないわけです。

それなのに「今までよりも飛ぶ」と勧められ、もしくは思い込んでしまって、ニュークラブや人気の高いクラブが発売されると購入しているのではなぜでしょう?

それは有名メーカーであったり人気のブランドだからで、つまり名前を信用していると言うことであり、もしかしたら性能で判断している人は少ないはずです。

メーカーがブランド化したプロモデルとプロ仕様の違い

メーカーが自社を代表するブランドと位置づけるものに「プロモデル」があります。

有名プロと専属契約を結ぶことで、プロはそのブランド名の入ったクラブやグッズを使用し、メーカーはいわゆるプロ仕様の高品質モデルとして販売します。
ただし実際にプロが使用しているものとは違い、まったく同じものではありません。

なぜなら同じものを作っても技量が違いすぎて、プロと同じ距離や方向性を望むことができないからです。

専属契約を結ぶようなプロであれば、一般ゴルファーがそのスイングスピードで振り切れる可能性は少なく、使い勝手のよいクラブにはならないと考えられています。

プロモデルはあくまでもブランドとして扱っているわけです。
つまり「扱いやすい」クラブには到底なりえないので、外形をそっくりにしたアマチュアに適したものがプロモデルと言うことになります。

でも購入する側は、専属契約しているプロがオーバードライブで有名ならば、顧客のニーズは飛距離となるで「飛距離アップ」をアピールしますし、アイアンの切れがよいプロであれば「ぴたっと止まる」とバックススピンを期待させることになります。

本来のプロモデルはプロが使っている実物と同じものですが、少し違うのがプロモデルというブランドと言うことになります。
そして市場ニーズがあれば、メーカーはトップブランドとして「プロモデル」として販促していくことにあります。

メーカーが作るブランド品とジェネリック品と違い

プロモデルは、メーカーの中でも最上級のブランド品という位置づけになると思いますが、一方で同じメーカーから出ている大衆向けのリーズナブルな品もあります。

いわゆるメーカー品とか高級ブランドといわれる品と、同じメーカーが作るリーズナブルなクラブとの性能の違いはどうなのでしょう?

ドライバーであれば、基本的に規定された初速や反発係数などに大差はありません。
また打ち出し角度も選べるので、高級ブランドもセットクラブでも9度・10度・11度などのロフト角は表示されていますし、バリエーションが多いから高級品と言うことでもありません。

一番の違いは新しい技術、つまり開発費がつぎ込まれているか否かにあります。
医薬品でいうとオリジナルとジェネリックのようなもので、メーカーが開発したものは研究開発費が掛かっていますが、何よりも最新の製品なのです。

ちなみにジェネリックの反対語はブランドになるので、まさにジェネリックは大衆用のリーズナブル品なので、初心者やジュニアなど年度や型を気にしないゴルファーにはピッタリだと思います。

一流メーカーの違いはブランド名を守れる力があること?

ゴルフ界においてPING(ピン)のパターは特別です。

PINGはメーカー名でありブランド名ともなっていますが、パターの代表的な「タイプ」でもあります。

巨大メーカーであるPINGは、ゴルフ界に強い影響力を持っています。
いわゆる「PINGタイプ」とまで言われ、現在のパターの基本形を作り出したメーカーなのです。
それだけに自社のブランドの権益が侵される恐れがあるとしたら、例え規定ができたとしても変更してしまう力を発揮します。

実際に発揮してゴルフ界が混乱した時期があります。
もともとパターに関してはヘッドの形状だけではなく、グリップの形やシャフトの曲がりなどについても、細部にわたって厳しい規定を設けています。
それは選手が本来持つ能力を上回るような性能を持つ道具はフェアではないという考え方からきたものです。
ですから真っ直ぐな円形のシャフトにグリップラバーを巻いたものであればOK、平らな板のシャフトやグリップは方向性を示すのでNGとしていたのです。

ところがPINGのグリップは楕円形で表面は平ら、指が当たる後ろの部分だけ盛り上がっていて、明らかに方向性をサポートしていました。
本来であれば規則と違いNGとなりますが、PINGのピストル型は伝統的なグリップ形状として協会がOKしたわけです。

ブランド名を守りきったメーカーとユーザーの感覚との違い

明文されている規則にあるのに、表面が平らで左手の部分を太くしたPINGの形状がOKであればと、後続メーカーがまったく同じ形状のグリップを作り自社のパターにつけたところ、なんと協会はNGとしたわけです。

すでに用品市場で大量に出回っていたこともあり、大混乱を招くことになります。
裁定の違いに対する批判もありましたが、違反グリップでは大会に出場することができないことから、グリップ交換が世界的なブームになるほどだったのです。

一般常識の解決法であれば、双方のグリップを違反にするか適用にすると思います。
ところが、協会の裁定はPING製を適用にして他のグリップは違反としたわけです。
もちろん、その根拠を明確に答えられた人はいなかったと思います。

見た目にもまったく同じもので、質感(ゴムラバーの材質)も同じですが、なんと違反裁定の理由はグリップに「PING」の文字がないことでした。

これ以降、クラブやボールに対する規則が全面的に見直され、新たに公平な規則として「公認」をとった物だけをOKな品としていくことになります。

メーカーがブランド名になっているとき、ゴルフ用品だけではなく社運を賭けてでも守っていく大切なものが、メーカー名でありブランド名と言うことかもしれませんね。

メーカーが大切にするブランドをミスでへし折るプロの愚行

メーカーがブランド名を大切にするのは当然のことです。
特にゴルフ用品メーカーの場合には開発費もさることながら、専属契約するプロゴルファーとの契約料は、そのプロが一生かけて稼ぎ出す賞金額、もしくはそれ以上を支払っているのですから、まさに「お金」が掛かっています。

そんな大事な商品をミスショットをしたからと叩き折るようでは、ペナルティがあっても仕方ないことでしょう。