ゴルフ界の歴史を変えた男と言われるタイガーウッズですが、近年は腰や膝の故障が原因で不調に喘いでいるようです。
そこで全盛期のスイングを元にして、特徴のあるアイアンの打ち方と、またセオリーとは違うタイガー式の打ち方の意味についても検証していきたいと思います。
アイアンのスイングでとるタイガーウッズの特徴的な構え方
長身のタイガーウッズがアイアンを持つと、短いと感じることはないでしょうか。
もちろんシャフトは一般的な長さなのですが、上体を起こして顎を引き肩から下がる両腕の長さと比べると、確かに短くてコントロールしやすそうに見えるものです。
見た目が短いアイアンでも長身から繰り出されるボールは、信じられないくらいの高さまで上がり、狙ったポイントに真上から落下してきます。
そこでタイガーウッズのパワフルなアイアンショットを参考にしながら、アイアンの打ち方について考えていきます。
最初にタイガーウッズのアイアンを構えたときの姿勢について確認しますが、実はタイガーウッズは毎年のようにスイングスタイルを変えていて、ある意味「進化しているスイング」が特徴です。
そこで、もっとも強かった時代のタイガーウッズを参考していきます。
まずはアドレスに入るときのスタンスの取り方です。
本来は飛球線に対してスクエアな状態、つまり両足のつま先を平行に置くわけですが、タイガーウッズは左足のつま先をオープンにします。
これはつま先を開くという意味ではなく、左足をほんのわずか踵側に引くことで、腰のラインを開いているわけです。
この腰の開きによってダウンスイングはスムーズになり、振り切れることに繋がっています。
タイガーウッズのアイアンの特徴はコックを固めるスイング
もともとオープンなスタンスを取るときは、テークバックで大きく肩を回さずともダウンスイングができることを期待できるからです。
タイガーウッズの場合には膝や腰に爆弾を抱えているので、リラックスした状態でトップの位置を迎えることができ、しかもフェースをスクエアに合わせやすいメリットがあると思います。
次に注目するのはコックの固め方と使い方です。
飛距離を求めるドライバーなどと違い、アイアンは正確な距離感と方向性を重視するクラブです。
そのためには正確なインパクトが必要になるので、スイングで左手の甲は重要なポイントとなります。
基本的には飛球線に対してスクエア(直角)になることで、フェースを合わせるのが「左手主導」のスイングとなります。
タイガーウッズも同じように左手の甲は重要だと考えていて、その形を崩さないようにするために、テークバックの時点で形を作ってしまいます。
トップの位置で左手の甲とフェースは同じ方向を向いています。
そのためにはセットした状態からクラブを引くときに、細心の注意をもって左手の甲とフェースの向きが変わらないようにしています。
いわゆるコックを固めた状態でテークバックし、そのままダウンスイングに入るというシンプルな動きをとっています。
タイガーウッズは「く」の字になるアイアンの独特なスイング
タイガーウッズはアイアンをダウンスイングするとき、頭の位置を変えないようにしているため、身体が「く」の字になっています。
若干オープンに構えることで、肩の回転の割りには腰を回さないテークバックが可能になりますが、その分だけ体重が右側に移動します。
正確には軸が右足の上に乗った状態なので、頭は右足の上にあるわけです。
通常であれば、ダウンスイングでグリップの移動とともに軸も左側に移動しますが、タイガーウッズの頭はそのまま右足の上に残ります。
ところが腰は当初から開いているので、腰だけが先行する形で左側に動き、身体は「く」の字になってしまいます。
普通であればプッシュアウトするところですが、シャフトが時計の針で3時を指す辺りから、右腕の肘に力が入り出します。
そしてインパクトの少し手前では、左手の甲で方向性を、右腕でパワーを与えるスイングをしているのがタイガーウッズの特徴と言えます。
肩を沈めるのがタイガーウッズのアイアンスイングの特徴
タイガーウッズのアイアンのスイングでのもうひとつの特徴と言えば肩の動きです。
ゴルフスイングは本来の人間の身体の動きとは違う2つの動きを同時にしています。
肩を回す行為は背骨の中心軸に回転している動きなので、上体を前傾していたら地面と平行に肩が回ることはないわけです。
もしも身体の仕組み通りにスイングすると、テークバックで左肩は沈み、右肩は上がることになるはずです。
ところがゴルフスイングでは、「左肩を回す」と言うのは、直立した状態で背中の方向に回すことをベストとしていて、左肩が下がることを良しとしていません。
つまり背骨を中心軸に身体を回転しながら、腰でもうひとつの回転をして地面と平行な回転をしているわけです。
タイガーウッズは腰に爆弾を抱えていますから、敢えてこの腰の動きをカットしています。
タイガーウッズがアイアンをテークバックするときは、左肩を沈め右肩を上げ、逆にダウンスイングでは右肩を沈め左肩を上げているのが特徴的です。
アイアンはハンドファーストでスイングするタイガーウッズ
タイガーウッズの5番アイアンのショットを見ると、インパクトの瞬間はハンドファーストになっています。
クラブヘッドをボールの後ろに置いて構えたときには、わずかにハンドファースト気味の形で、左股関節の前辺りでグリップを構えます。
これは両肩を飛球線に対してスクエアにして、右肩を少し下げた姿勢で構えるためです。これによってグリップの先側を握る右手はリラックスすることができますし、グリップを真っ直ぐ引くことができるようになります。
両肩と両腕で作った三角形を維持したテークバック、左膝を若干内側に入れて体重を移動させますが、そこには微塵もブレを感じさせません。
綺麗な形でトップまで引き上げたグリップを先行させたダウンスイングは、インサイドから身体を巻くように振り下ろすために、グリップの動きに対するヘッドの遅れはかなりのものです。
そのためボールの位置までグリップが到達しても、ヘッドはまだ3時の方角を指しています。
ここから一気にコックをほどきヘッドを走らせますが、グリップは左ポケットの位置まで移動し、ハンドファーストでインパクトすることになります。
スイングの完成度?タイガーウッズのアイアンの欠点とは
折角左手の甲とフェース面を合わせたアドレス・テークバック・トップと段階を踏んでいたのに、インパクトでは左手の甲が先行してしまい、スクエアなインパクトができなくなってしまいます。
そこでタイガーウッズは左手首を内側に曲げて、フェースを開いて合わせています。
実はトップの位置でその準備となるような手首の形が見て取れます。
本来であれば左手の甲と腕はフラットな状態ですが、タイガーウッズの場合には左手の甲を外側に曲げて構えています。
実際には一瞬のうちの出来事なので、身体が自然に反応した結果だと思いますが、唯一タイガーウッズのアイアンのスイングで複雑にしている部分かもしれません。
またインパクト後のフォロースルーでは、通常右足踵を上げることでスイング姿勢を開放しますが、タイガーウッズは両腕が9時の方向を指すまでベタ足のままにしています。
あれだけ強烈なダウンブローをしているのですから、開放しないことでの腰の負担は相当なものと思います。
結果はご承知のように、その後に腰を痛めて戦線離脱することになり新たなスイングへと変更することになりますが、残念ながらその後ゴルフ場外でのトラブルによって、未だ新しいスイングは完成されていないようです。
タイガーウッズの完璧なスイングとアイアンの精度に期待
タイガーウッズのスイングの特徴は安定感にあります。
もちろんアイアンと言えども常人のドライバー以上の飛距離も魅力的ですが、スイングそのものが完成されていて、タイガーウッズがピンを捉える精度はまさに完璧と思えるものがありました。
身体を治しメンタルをケアして、早くファンの前に現れることを祈るばかりです。