野球界のレジェンドと評されるイチロー選手、その独特なスイングには一流選手としてこだわりがあるようで、ゴルフにとってもアスリートとしての考え方や準備法は大変参考になるものです。
また振り子打法と呼ばれたスイングについても、飛距離を望むゴルファーにはぜひとも習得してほしい考え方です。
そしてプレイヤーとしての心構えなど、レジェンドならではの哲学についても参考にしていきたいものです。
ゴルフで一番大事なものはスイング?イチローの朝カレーで学ぶ
野球界のレジェンド「イチロー」と言えば、振り子のような独特なスイングはジュニアの憧れ、またその活躍は世界中の野球関係者が認めるところです。
練習方法や日常の過ごし方、またルーティンなど参考となる部分は、野球に限らずゴルフでも取り入れている人も多いようです。
そこでイチロー選手の日常から、参考となる部分を見ていきたいと思います。
まずは有名な「朝カレー」から始めます。
実はこの「朝カレー」、現在は召し上がっていないようですが、試合前の朝食にはカレーライスを食べるのは有名な話です。
野菜がいっぱい入っていることで、「バランスが取れた食事だ」と考えているとコメントしていたことがありましたが、実はもっと違うところに要因はあるのかもしれません。
本来、アスリートは炭水化物を最小限に抑えて、肉(たんぱく質)と野菜(ビタミン等)を主食にしています。
一方でカレーライスの主たるものはライス(炭水化物)ですから、アスリートが試合前に摂るメニューとしては向いているとは思えません。
もちろんイチロー自身もそんなことは十分に承知しているはず、敢えて朝カレーを食べていることを伝えたかった理由を推測すると、「精神的に落ちつけるのは子供のころから慣れ親しんだ食事を摂ること」ではないかと思います。
精神的に落ちつくための朝カレーは、「平常心」を望むゴルフにも通じるものがあり、参考にしたい考え方です。
ベストコンデションを保つイチローの源は準備運動にある
イチローと言えば凡打のようなヒット、偶然にポテンと野手間に落ちたように見えるあのフワッとしたスイングが印象的です。
「最初の頃は笑われた」とコメントしていましたが、毎年3割を超える成績を残すうちに、故障もせずに高いパフォーマンスを見せるイチローの周りには、大リーグ選手も学びたいと練習を一緒にやってくるようです。
40歳を超えても超一流のパフォーマンスを見せることができるのは、この準備段階での準備運動を完璧にこなしているからだと思います。
筋力トレーニングは自宅のジムで、球場では入念な柔軟運動を行ってから練習を開始します。
実はゴルフも同様で、ゴルフ場に到着、フロントで受付しロッカー室へ、その後ドライビングレンジで1カゴ打って……といったパターンが多いと思いますが、イチロー選手のようにスイングの前にしっかり準備運動を済ませておきたいものです。
スイングをする前に準備運動したい箇所は、足首、膝、腰、肩甲骨、首、手首です。
足首は片足ずつ爪先を立てて回す、膝は屈伸運動、腰は両足を広げた四股スタイルで両太ももを両手で押さえて背骨を伸ばすようにし、上体だけをひねります。
肩甲骨は背中側で両手を組んで真っ直ぐに突き出すと肩甲骨同士が背中の中央でくっつくようになります。
そのまま両手を上に引き上げる運動を繰り返します。
首や手首は回します。
時間にしてわずか10分程度ですが、最初にこの運動をしてからゴルフに向きあうクセをつけてしまえば、イチローのように故障することなく良い結果を得られると思います。
イチローのスイング前のルーティンをゴルフに生かす
そしてイチローといえば、バッターボックスに入るときに毎回同じ動きをするルーティン、構える前の一連の動きは野球を知らない子供でも真似ができるほど有名です。
このルーティン、ゴルフにとっても重要なものです。
ショットに入る前のルーティンを作っておくと、スムーズにスイングができるだけではなく、パッティングなどではプレッシャーを受けることなく平常心でスタンスをとることができるとされています。
ルーティンに正解はありませんが、一応「こんな感じ」といった例を紹介します。
ドライバーによるティーショットです。
ティーグラウンドに上がり、ティーインググラウンド(マーク間で2クラブレングス以内)の中から、足を踏みしめる位置が平らな箇所を探します。
その位置からティーを挿し、ターゲットを定めてボールと結び、飛球線の後ろからイチローのようにクラブで目標とする飛球線を差します。
このような一連の流れを、毎回行うことで「いつもと同じ」なスイングができるわけです。
ちなみに練習場でボールを打つと調子がいいのは、プレッシャーがなくいつもと変わらずに打っているからです。
スタンスをとったときに、その練習場の打席と同じ気持ちでいられるようにすることが、ゴルフのルーティンの目的とされています。
ゴルフに生かすイチローのスイング理論
もちろんイチローの打法もゴルフに通じるところがあります。
イチローのスイングは、飛んでくるボールを打っているのですから、まったく同じと言うわけにはいきませんが、基本的にゴルフのスイングに似ている部分があります。
イチローのスイングはいわゆる「振り子打法」として有名です。
野球のスイングの詳細な解析については別途として、基本は体重を移動してインパクトゾーンに入るということです。
身体の小さなイチローがホームランを打てる要因のひとつに、この体重移動の効果があると思います。
一方でゴルフは「頭を動かさない」と教えられたことから、捻転を主として中心軸を大事にしたスイングに重きを置いています。
でも最近では軸を2つ置く2軸打法で、飛躍的な飛距離アップを実現している人達がいて、レッスンでは「軸を移動して飛距離アップを狙う」といったスイング法が、いまやスタンダードとなっています。
もともとパワーが不足しているジュニアやレディースは、「大きく振る」と言い方を変えてこの体重移動を取り入れてスイングを推奨しています。
一見すると上体が揺れているように思えますが、身体の中心軸から頭だけが左右に動く、もしくは上体と一緒に揺れることがいけないとされているのであって、中心軸が移動することに問題はありません。
基本的にスタンスの段階で若干右サイドに体重を移し、テークバックで右ひざの上に顔が来るようにします。
ポイントは右ひざの上です。
顔の真下に右膝が来ていれば、身体の中心軸は右サイドに移行しているはずです。
ダウンスイングではその右ひざに溜まったパワーを、飛球線の前方に解放するようなイメージでインパクトゾーンに運ぶと、体重は左サイドに移動します。
まさにイチローのバットスイングと同じ方法で飛距離アップを狙うことができます。
イチローと同じように進化し続けることが大事
イチローが大リーガーから尊敬されているのは、理に叶ったスイングや練習方法、またモチベーションを保つためのルーティンなど、さまざまな要因があると思います。
同時に常に持ち続けている向上心が、メジャープレーヤーにとって新鮮に映るのかもしれません。
我々の知っている日本球界のイチローと、メジャーリーガーのイチローはまったく別な人です。
人格とかの話ではなく、イチローのスイングは毎年進化し続けていて、いまでは国内でプレーしていたときのスイングとは全く違うものになっています。
実はゴルフも同じで、去年より今年の方が上手くなっていると仮定したら、その原因がどこにあるかを分析する必要があります。
飛距離が5ヤード伸びたとすれば、スイングスピードが速くなっているのかもしれません。
もし、速くなっていたら今のクラブよりももっと飛ぶクラブ、スイングにあっているクラブを用意すべきです。
スイングが定まってきたから失敗が少なくなったと仮定したら、どのクラブでどんな場面でも同じようにスイングができるよう、各クラブを使ったスイングを動画撮影して、違いを見つけてさらにミスの少ないスイングに改善するべきです。
世界の一流選手が認めるイチローが現状に満足することなく、日々努力を重ねているのと同じように、ゴルフのスイングも常に進化を目指していきたいものです。
ゴルフでレジェンドと言われるにはマナーとエチケットが大事
スポーツ選手のイチローからもっとも学びたいことは、スイングではなく彼の哲学ともいえる野球への向き合い方です。
どの選手に対しても敬意を表し、球場やスタッフに感謝をし、そして観客には最大限のサービスをします。
ただし、その敬意や感謝またはサービスは野球に関することのみに徹していて、ほかの場面ではスーパースターではなく1人の人間として過ごしています。
ゴルフにおいても大切なことで、キャディへの接し方、コースコンディションの批判、同伴プレイヤーへの敬意、マナーやエチケットは必ず身につけておきたいものです。
ティーアップしたティーグラウンド周辺では会話をしない、階段のついているティーグラウンドはそこ以外から出入りしない、バンカーは縁の低いところから進入しプレイヤー自身が整地する、グリーンに上るときには靴底の砂を落とす……子供でも知っていることが、ややもするとできなくなる時があるものです。
まずはフロントの受付についたら、こちらから先に「おはようございます」と挨拶しませんか。
気軽な挨拶こそクラブハウスの基本です。
それが周囲のプレイヤーから一目置かれる存在になり、イチローのように尊敬されるプレイヤーへの1歩を踏み出すきっかけになるかもしれません。
ゴルファーの理想はジェントルマンを目指すこと
イチローに限らず頂点を極めた人物には学ぶべきところがあるものです。
技術的な情報だけではなく、「なぜそう考えるのか」と哲学を探ることで、自分自身の考えと対比することができます。
とかく「向上心を持つ」といえばスイング理論に行きがちですが、ゴルフを通して「ジェントルマン」を目指すのも悪くはないと思います。