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マムシと呼ばれた男 今は亡き杉原輝雄のシンプルなスイング

2017.9.8

杉原輝雄のスイングは当時であっても独特なフォームでしたが、身長160センチで70歳近くまで現役選手としてトーナメントで活躍できたのも、そのシンプルなスイングがあったからと言われています。

そこから一般ゴルファーが参考になる杉原輝雄流の考え方を確認していきたいと思います。

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杉原輝雄のスイングと言えばダウンブローが代名詞

関西ゴルフ界のドンと言われた杉原輝雄プロ、口を開けば毒舌で有名でしたが、義理人情に厚く、すべてのプロゴルファーから信頼されるゴルファーでした。

最近の日本人は大型になったと言われていますが、160センチの身長は当時としても小柄で、しかもスイングを見ただけで中村寅吉門下と分かる独特なスイングが印象的でした。
晩年は大病を患い何度も手術をした身体で出場してきた不死身の男と呼ばれていましたが、それより以前は同じプロ仲間からも「勝負師」とか「いぶし銀」と呼ばれ、また諦めないプロ根性から「マムシ」とも呼ばれた、在りし日の杉原輝雄プロから、彼の代名詞ともなっているダウンブローを学びたいと思います。

そもそも貧乏な家に生まれてゴルフを始めた苦労人だったこともあり、「何が何でも勝たねばならぬ」タイプのゴルファーでした。
苦労知らずのボンボンが多いゴルフ界ですから、オフシャルの挨拶でも「あんた苦労知らずのボンだってな」と枕詞にしていたほど、金持ち嫌いだったようです。

体形に恵まれず、お金もない子供時代を過ごした杉原輝雄は、運よく中村寅吉の門下に入ることができ、何の疑いもなくひたすら中村流のスイングを習得して頭角を現していきます。

それ以前のプロたちはヒッコリーでゴルフを始めた、日本ゴルフの草分け的な存在だったわけですが、道具の進化に着目した杉原輝雄は自分のゴルフを身につけていきます。

それがダウンブローのスイングです。

杉原輝雄は五角形で構える独特なスイングフォーム

杉原輝雄が愛好したダウンブローとはボールをダイレクトに捉える打ち方です。

今ではあまり珍しくないかもしれませんが、当時は貴重な芝生をはぎ取るような打ち方をする人は少なく、しかも道具も高価だったことから曲がったり折れたりする危険性のあるスイングを好んでする人たちは限られていました。

さらにコースコンデションも、今のようなカーペットを敷きつめたような柔らかいものではなく、カチカチのベアグランドに芝の種をまいたようなコースが多く、芝に打ち込んでスチールシャフトが折れ曲がることも珍しいことではなかった時代です。

ですからスイングの基本は「払い打ち」だったわけですが、そこでボールの前方の芝生をはぎ取る強烈なダウンブローのスイングを取り入れたのが小柄な杉原輝雄でした。

初老で小柄なおじさんが、両肘を曲げてスイングをしていたら、ボールがまっすぐ飛んでいても声をかけたくなる、そんなタイプのスイングでした。
いわゆる五角形フォームと呼ばれていて、両肩を結んで1面、肩から肘で1面×2本、肘から手首で1面×2本、合計で五角形の構えでグリップを握っていました。

インパクトの場面で左肘は真っ直ぐになることはなく、常に五角形を意識したようなスイングをしていたようです。

独特なスイング!杉原輝雄のダウンブローを分析する

では実際に杉原輝雄プロが行っていた、ダウンブローのスイングについて確認してみましょう。

まずアイアンを握ります。
姿勢は一般的な形と同じで、腰から上は若干ですが前傾をかけます。
ただ160センチでクラブが長めなので、その分だけ肘を曲げて外側に出し、ヘッドの位置を調節します。
グリップ位置は左腿の前で、ボールよりもグリップが前方にあるハンドファーストに構えます。

グリップが左に寄ったことで右腕が伸びてしまうことのないように、アドレスのときに右肩を下げるのが杉原輝雄流の構え方です。
右肩が下がることで体重は若干ですが右寄り、頭も右に傾いているので、テークバックではスムーズに引くことができます。

トップの位置でひと呼吸してからダウンスイングを開始するようなイメージです。
決して捻転しているとは言い難いテークバック、ゴルフ場の中ではよく見る週一ゴルファーのスイングフォームのようにも見えます。

ダウンスイングではトップで作った左腕を真っ直ぐ振り下すのが一般的ですが、杉原輝雄のスイングは左腕にこだわりはないようで、曲がったままのトップ、そして肘を曲げたままダウンスイングしインパクトを迎えます。

杉原輝雄はダウンスイングで頭を沈めてインパクトする

もしも練習場で杉原輝雄と同じスイングをしていたら一声かけてあげたいフォームだと思いますが、実は理にかなった素晴らしいスイングということを見抜けますでしょうか?

杉原輝雄が注意しているのは、最初にハンドファーストで構えたその形でインパクトすることです。

基本的にインパクト以外のすべては「ついで」の動きなので、あまり重視していなかったようです。

左肩の外転は左足の踵程度までしか回さず、右側に体重移動することでターゲット方向に背中を向けていましたが、このスイングは中村一門の独特なフォームでした。
ちなみに前日本女子ゴルフ界の会長で、全米女子OP優勝の経験もある樋口久子プロも中村一門で、肘の使い方は違いますが同じようなテークバックをしていて、当時の主流スイングだったようです。

両肘は曲がったままですが、ダウンブローに振り下されるグリップはハンドファーストでインパクトすることになります。

このとき大事なことは、テークバックで右側に移動した体重を左側に移動することです。そして両足でしっかり大地を踏みしめて、グリップを振り下ろすときに頭を沈めることです。

インパクトの直前にこうして頭を沈めることで、長いインパクトゾーンを取ることができて、強いボールを打つことができるようです。

またスイング自体は縦振りのイメージが強く上から下に振り下ろす形ですが、フォロースルーを取らないために、インパクト後すぐにターゲット方向に身体は向いているのが杉原輝雄の特徴です。

杉原輝雄のスイングの極意「歳をとってもシングルであれ」

実はこの杉原輝雄流の独特なスイング、一般的なゴルファーには取り入れたいスイング法なのです。

石川遼プロの流れるようなスイングや松山英樹プロの力強いスイングに憧れますが、実際にあのスイングをするにはゴルフ以外の体力作りなどで体を鍛えていないと、習得するにはかなり難しいものがあります。
特に肩甲骨の自由度が制限されてくる30歳を超えると、一流選手のスイングは至難の業となります。

ところが杉原輝雄プロのスイングは、テークバックやトップの位置、しかもダウンスイングに至るまで年齢に関係なく、しかもインパクト後のフォロースルーやフィニッシュにもこだわりはありません。

大事なことはいかにスイートスポットでボールを捉えるか、クラブヘッドの性能を信じてダイレクトに打ち込むかです。

その結果として2008年68歳という高齢でありながら日本ツアーで予選通過した記録を持っているのが杉原輝雄なのです。

先人は「歳をとってもシングルであれ」と、マン振りする若者を諭す言葉を遺しましたが、杉原輝雄の中には年齢と体力に見合ったスイングが隠されているような気がします。

新しいもの好き?杉原輝雄の独特なスイングには元がある

ダウンブローのスイングに「ミスはない」と言われています。
いわゆる払い打ちをするからシャンクになるし、右に行ったり左に行ったりと曲がるボールに悩むわけです。
上からボールを潰すわけですから、フェースの向きだけしっかりスクエアであれば、テークバックでどれだけ身体を回そうが、トップの位置が高かろうが低かろうが問題はありません。

杉原輝雄流のダウンブローはこれに一味加えたもので、インパクトのときに左手が緩まないように頭を下げることです。

普通のスイングではインパクトのときに、肩のラインよりも頭を下げるなんてあり得ないと思いますが、この独特なスイングフォームでいくつになっても第1線で活躍していた名選手でした。

この杉原輝雄のダウンブロー、日本のゴルフ界では先駆けとなる新しいワザでしたが、実は世界的にはスタンダードなスイングとなっていました。

1950年代にベン・ホーガンという最強のプロゴルファーがいて、その人が遺したゴルフ教本『モダンゴルフ』に杉原輝雄が使う体重移動によるダウンブローの打ち方が記されています。
この本の中では「身体を回したり腰をひねったりせず、腰を左側に移動することでダウンブローを開始する」と紹介しています。

ただそこに杉原輝雄流の五角形の構えを加えて、独自のスイングを造り上げて一時代を築くことができました。
また杉原輝雄は、いち早く長尺クラブを取り入れた人でもあり、またアスリートのトレーニング法として有名な加圧トレーニングを始めたのは1996年のことで、新しいものを取り入れる名人だったのかもしれませんね。

年齢を重ねても変わらぬ杉原輝雄のシンプルスイング

杉原輝雄の背中に担ぐようなスイングは、インパクトに特化していたように思います。

スイングだからと無理な姿勢をとらずに、体重移動の幅を狭くしながらもテークバックで右体重、フィニッシュでは左体重と、日常の身体の動きとさほど変わらない中で効果的なインパクトをしていました。

年齢を重ねても主戦場で競えたのは、このシンプルなスイングがあったからだと思います。

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