女子プロのスイングがスローなのに飛距離が増す理由とは

最終更新日:2017/09/04

女子プロのスイングがとてもスローに振っているように見えるのに、一般男性の飛距離以上に飛ぶのはなぜでしょう?

ゆっくりしたスイングにその秘密が隠されています。
ここで女子プロのスイングをポイントごとに分析して確認していきます。

女子プロのスイングがスローに見えるわけとは

女子プロのスイングがスローに見えるのは、理にかなったスイングをしているからです。
ゆっくり振っていると思われる宮里藍選手は、ヘッドスピードが40m/sですから一般男性並みの速さです。
しかも平均飛距離は250ヤードなので、ゆっくり振っているようでボール前後のヘッドの通過速度はかなり速いことが分かります。
ちなみに宮里藍選手の場合にはインパクトの後のフォロースルーのほうが速いということです。

一見するとスローなスイングですが、スイングでもっとも大切なインパクトが最速であれば、なんの問題もありません。
他の動きは確実にインパクトするためであり、スイングスピードを上げるためのものです。

円の動きを表すスイングプレーンを大事にすると、理にかなったスイングができます。

もともとスイングプレーンとは、ヘッドの動きを表したものです。
でもプレイヤーはグリップの動きを意識してスイングしています。
テークバックを始動するときからトップの位置まで、それぞれにグリップの形を意識しているはずです。

そこでグリップの位置からスイングプレーンを考えていきます。

女子プロのスイングスタイルがスローになる訳とは

まずはクラブのヘッドをセットするときです。

女子プロはスイングに入る前のルーティンを大事にしているので、スタンスを取る前の動作が重要になります。
多くのプロはティーアップしてからボールの後ろに回って、ターゲットを確認して飛球線を明確にします。

ただこの動作はプレーの時間に含まれているので、あまり時間をかけると遅延プレーとなる場合があります。
前の組がいなくなっているホールではプレーの時間が計測されることがあり、ティーショットの場合には前の選手が打ち終わってから40秒間がリミットです。

クラブヘッドをスクエアに合わせたらテークバックを開始しますが、テークバックがどんなに速くてもインパクトでパワーを伝えることはできません。
ですからスローなバックスイングになります。

左肩を十分に回すように捻転しますが、それぞれにテークバックでの注意すべきポイントを持っています。

例えば宮里藍選手の場合には、左肩を大きく回すために右肩に軸を置いています。
これだと背骨に軸を置くよりも大きく外転することでパワーを蓄えることができます。

テークバックは、弓道で矢を引くときの「キリキリ」としたあのイメージで、グリップをトップの位置まで引き上げていきます。

女子プロのスローなダウンスイングを可能にするコック

トップの位置で大事なことは、コックが固まっていることです。

男性に比べると非力な女子プロですが、飛距離は250ヤード以上もあり、中には男子プロ並みの飛距離を持っている人もいます。

そんな非力な女子プロでも飛距離を伸ばせる秘密は左手のコックにあります。

飛距離を生み出すのはヘッドスピードとミート率です。
どれだけ速くヘッドをボールに当てることができるのか、ヘッドの芯で捉えることができるのかがポイントになります。

ところが女子プロのスイングを見ると、決して速いようには思えません。
どちらかというとスローなダウンスイングでインパクトしているイメージです。
それでもヘッドが走るのはコックを上手く使っているからです。

コックとは左腕をまっすぐ伸ばして親指を上に立てたとき、親指と腕の角度が90度になった状態をいいます。
この90度の状態をキープしていると、「コックを固める」と言い、グリップがトップの位置になったとき適正なコックになっています。

このコックが固まると綺麗なダウンスイングができるようになります。

女子プロのスローなスイングでヘッドスピードが加速する訳

女子プロによってダウンスイングの仕方は違いますが、多くは払い打ちのようなスイングになります。
特にアイアンの場合には、ダウンブローでターフをドーンと切り取る打ち方をする人もいますが、女子プロはターフを削らないクリーンショットが多いようです。

トップから振り下ろすとき、グリップはコックで固まっているため、グリップエンドは右側(飛球線後方)を指しています。

そのままグリップエンドは地面に向けて振り下ろされますが、右股関節の辺りまで来たとき、グリップエンドを身体の方に向きを変えます。
このときリストコックは解れることになり、90度の角度が消えて親指と腕はまっすぐの一直線になります。

この状況をヘッドで確認すると、フェースが飛球線に合わせて振り下ろされ、コックが解かれるときにフェースは飛球線に対してスクエア(直角)になります。

腕が振り下ろされるスピードよりも、コックが解かれてヘッドがスクエアに向きが変わるスピードの方が速くなり、結果としてスローで振り下ろされたダウンスイングでも、ヘッドスピードは加速されているわけです。

宮里選手に見る女子プロのスローなスイング

スイングがスローに見えてもヘッドスピードが速いのは、コックを上手に使っているからです。

ただコックのタイミングがずれるとスライスしたりフックしたりと方向性に難が生じることがあります。
でも女子プロの場合には、コースから消えるほど曲がる人は少ないように思います。

本来、ドライバーが250ヤード以上も飛ぶのであれば、多少ともブレがあるはずですが、それがないのは力みが少ないからです。
「飛ばそう」と必要以上にグリップを握りしめると手首が硬くなり、結果としてタイミングがズレてしまいます。

女子プロの多くは、インパクトもスイングの通過点のひとつとして捉えて、フォロースルーへと移行していきます。

ちなみに宮里藍選手は、インパクトよりもフォロースルーの方がヘッドスピードは速くなっています。
これが実現できるのは、テークバックを小さくフォロースルーを大きくしているためです。
いわゆるシンプルなゴルフをすることで無駄な動きを排除して、ミート率を上げインパクトスピードを速くしているわけです。

フィニッシュまでスローでスイングすることで完成する

女子プロのスイングで最後となるのはフィニッシュです。

基準をインパクトにおくと前後の動きは重要になります。
スローで振り下ろされ、インパクトゾーンではコックが解けて、フェースはスクエアになります。
その後フォロースルーでヘッドをターゲット方向に送ったところでスイングの役目が終わることになり、それ以降は「ついで」の動きになります。

打ち終わったあとの動きであるフィニッシュポーズは、基準となるインパクトから考えると直接の意味はなさそうです。
でもスイングは一連の動きなので、スタートからフィニッシュまでがひとつの動きになります。

これはヘッドの動きとは関係なく、体の内部の筋肉や骨の動きに関係してきます。

スイング自体はグリップを動かすことでヘッドが動いてボールをヒットします。
グリップを動かしているのは手首と腕、そして肩の外転で円運動をしているわけです。
この肩の動きは背骨を中心軸に回していますが、実際には左肩甲骨が背中で左右に移動して肩を動かしています。

その左肩甲骨を元の位置に戻すのがフィニッシュです。
シャフトを背中に当てるか、首の後ろに当てて、身体をターゲットに向けると身体の中が落ち着いた状態になり、綺麗なスイングが完成します。

女子プロのスローなスイングはアマチュアのお手本

女子プロのスイングがスローに見えるのは、無駄を排除した結果であり、究極のシンプルなゴルフと言えます。

アマチュアゴルファーにとっては世界で活躍する男子ゴルファーよりも、女子プロのスイングを参考にした方がより上達するヒントを得られるのは間違いなさそうです。