試合に出る資格であるシード権を持たない男子プロゴルファーが、ツアートーナメントに出る為に戦わなければならないのがQTです。
QTはクオリファイングトーナメントの略で、ファースト、セカンド、サード、そしてファイナルクオリファイングの形で戦います。
PGAのプロテストに合格し、PGAプロのライセンスを持つプロゴルファーはセカンドQTから出場する事になります。
また、当年の最終戦で翌年のシード権を失った選手は、最終戦からすぐファイナルQTに参加し、翌年の出場権をかけて戦います。
では、プロゴルファーにとって過酷を極めるQTについて見ていきましょう。
PGAプロテストを受けずに男子プロゴルファーになれるQT制度
現在、男子プロゴルフのツアーを主催しているのが、JGTOであるジャパンゴルフツアー機構です。
このJGTOの主催するプロゴルフツアーに参戦する為に、QTトーナメントに参加し、結果を残す必要があります。
PGAの主催するプロテストに合格するだけでは、プロゴルフツアーに参加する事はできないということです。
ただ、PGAの主催する日本オープン等、国内メジャートーナメントはPGAのプロゴルファーライセンスで参加する事ができます。
現在は、学生など若年ゴルファーの実力が上がっており、従来のプロテストに参加せずQTランクによってプロゴルフツアーに参加する事も珍しくなくなりました。
こうした光景を目にする事が当たり前になったのも、このQT制度による所が大きいのです。
今や実力さえあれば、『誰でもプロゴルフツアーに参戦できる』そういう時代になりました。
アメリカツアーでは、古くからプロテストという制度はなく、完全実力主義のプロゴルフツアーであった事から、日本もシステムを真似たと言えます。
プロテストに合格しなくてもプロになれる時代です。
男子ではセカンドQTに進むとQTランクが付与されプロゴルファーとなる
男子では、セカンドQTに進むとQTランクというものが付与され、ツアープレーヤーとしてプロゴルファー認定されます。
一部、アマチュアを除きますが、セカンドQTに参戦するとプロゴルファーとなりアマチュア資格を失います。
ゴルフでは、アマチュアがプロゴルフツアーに参加し、賞金が与えられる順位を残しても賞金をもらう事はできません。
また、賞品も小売価格75,000円を超える物はもらってはならないとなっています。
これはJGAが規定を作っており、これに違反するとアマチュアの正式競技に出場できなくなります。
昔は男子プロゴルフツアーで当時高校生だった石川遼君が勝利し、優勝賞金が2位の選手に渡りました。
最近では、女子プロゴルフツアーで高校生アマチュアが勝つ事が出てきており、この場合も2位の選手に賞金が渡っております。
この様に、ゴルフではアマチュアとプロのお金に関する扱いが明確に決められており、違反するとペナルティーが科される様になっているのです。
セカンドQTに参加し、QTランクを付与されるという事はプロゴルファーになるという事ですので、結果を残せば賞金は与えられる様になります。
男子でツアープレーヤーと言われるプロゴルファーは約1600人いる
日本国内の男子プロゴルフツアーで活躍するツアープレーヤーは、JGTOのホームページによると約1600人となっております。
この数、多いか少ないかと言うと、プロ野球選手が育成選手を含めると約900人、プロサッカー選手がJ1、J2合わせて日本国内だけで言うと約1000人となっており、プロとしてのゴルファーは少し多い方になるのではないでしょうか。
しかし、レギュラーツアーと言われるテレビ放送があるツアーで戦える選手の数は賞金ランク65位以内と、スポンサーなど関係組織の推薦選手数名だけです。
仮に1ツアー70名としてみると、その確率およそ4.3%です。
ツアープレーヤーと言っても、ゴルフだけで生計を立てられるのは、ほんの僅かな選手だけと言うのがこの数字から見て取れます。
ちなみに、難関試験の代名詞とも言える司法試験の合格率は24~25%となっています。
この数字から見るとプロゴルファーというのは、いかに過酷な職業であるという事が分かりますね。
それでも、プロになりたい、プロゴルファーとして生計を立てたいというゴルファーが人生を賭けてQTに挑戦するから、ファンを魅了する事ができる、とも言えます。
誰でもプロゴルファーになれるQT制度、参加するにはどうしたら良いか
男子プロゴルフツアーに参加する為の登竜門、まずはファーストQTに参加するにはどうしたら良いのでしょうか。
誰でも参加する事ができるQT制度ですが、かなりの腕は必要となります。
参加資格はいくつかあるのですが、参考に社会人ゴルファーがファーストQTに参加するケースを見てみましょう。
社会人として参加するには、JGAハンディキャップが取得できるゴルフコースで3.0以下が必要となります。
その他に、高校か大学の正式競技に参加登録しているゴルフ部にそれぞれ3年か4年間在籍し、所属責任者から署名捺印をもらえれば参加可能です。
ただ、このパターンは学生を卒業する年か、卒業後1~2年位までしか使えないないでしょう。
ですので、社会人ゴルファーがファーストQTに参加するには、ハンディキャップ3.0以内を取る事が現実的な方法と言えます。
しかしです。
普段仕事をしている普通の社会人がハンディキャップ3.0以下を取る事は、相当難しいはずです。
シングルハンディキャップでかつ5.0以下の腕前を身につけるには、相当な練習時間と実践が必要となります。
全ゴルフ人口の1%にも満たないシングルプレーヤーの中でもさらに数パーセントの腕前が必要となるのです。
寝食を忘れ本当にゴルフに打ち込めるストイックさがなければ、取れないであろうハンディキャップの数値です。
それぞれのQTで残れる人数
ファーストQTからファイナルQTに向かって人数が減っていきます。
それぞれのQTステージで参加資格がある為、次に進んだ数イコール次のQTの参加者トータルとはなりません。
まずファーストQTでは、2会場でそれぞれ約100名のゴルファーが参加します。
そこからカットラインがあり、セカンドQTに進めるのがそれぞれの会場で25名ほどです。
セカンドQTからはPGAのプロゴルファー資格を持った選手も参加してきます。
全国10会場程度で開催され、それぞれ40名程がサードQTに進めますので、その数400名程といった所でしょうか。
サードQTは6会場程で行われ、それぞれ30名弱の男子選手がファイナルQTに進みますので、サードQTからファイナルに進めるのが180名程です。
そして、ファイナルQTはその年のシード落ちのプロゴルファーが参加してきます。
ファイナルQTの予選参加者は約200名で、その内決勝まで進めるのが90名弱となっています。
数字から見て、ファーストQTからファイナルQTの決勝に残るのは至難の業と言えるかもしれません。
誰にでもチャンスがあるが、過酷なQTツアー
男子プロゴルフツアーは多くのゴルファーに門戸が開かれた制度と言えます。
しかし、ファーストQTからファイナルQTまでほぼ1年間近くを要するツアーであり、また各QTでの試合数もかなりあります。
ファーストQTで54ホール、セカンド、サードQTでそれぞれ72ホールあり、ファイナルQTに至っては予選72ホール、決勝36ホールのトータル108ホールを戦う事になります。
男子プロのレギュラーツアーは4日間競技72ホールからすると、108ホールというのがいかに過酷な戦いなのかが想像できるはずです。
また、ファイナルQTはその年シード落ちしたトッププレーヤーや海外ツアーを参戦してきた強者が翌年の男子プロゴルフツアーに参加する為に挑戦してきます。
ファイナルQTはギャラリーがいないだけで、そこで戦うプロの実力はレギュラーツアーのそれと変わらないのです。
ファイナルQTの結果によって翌年のレギュラーツアーに参戦できる数が決まります。
108ホールの過酷な戦いの先に、またレギュラーツアーの過酷な戦いがある。
それがプロのツアーなのですね。
QT制度によって日本のゴルフレベルが上がった
男子プロゴルファーのQT制度は、従来のプロゴルフ制度よりも門戸が広がり、また若年層の台頭によって日本男子プロゴルフのレベルを上げました。
今では当たり前であるQT制度ですが、従来のプロゴルフ制度を壊す破壊的な仕組みの導入であった為、既得権者からの猛反発もあったと聞きます。
しかし、世界のゴルフ基準がこのQT制度である以上、日本のゴルフ界も変わらなければならなかったと言えます。
結果的に、システムが変わっても実力があるゴルファーしか残れないという、プロスポーツのごく自然な形に収まったのです。
これから先、もっと日本のレベルが上がり、四大メジャーで優勝する日本人が現れるのではないかと期待する所です。