ゴルフカートが左ハンドルなのはゴルフ場が要望したから?

最終更新日:2018/04/20

ゴルフカートは海外から入ってきたから左ハンドルだと、まことしやかに噂されていますが、どうもそれは違うようです。

確かに海外製のカートは左ハンドルですが、ゴルフ発祥の地イギリスは右ハンドルの国です。

そこでカートのハンドルにまつわる意外な歴史を追っていきます。

ゴルフカートが左ハンドルなのはゴルフ場の事情?

ゴルフカートを運転したことがあれば、誰もが「あれ?」と気がつくことに、左ハンドルだという点があります。

公道を運転するのと違い、極端な違和感はないと思いますが、不思議に感じたことはないでしょうか?

なんとなく、「カートはアメリカ生まれの乗り物だから」といった説も流れていますが、米国発祥説は間違いではなく、左ハンドル製造の正解とも言えません。

現在多くの乗用ゴルフカートは、海外製が主流となっています。

しかし、ひと昔前は国産製が圧倒的に多かったものです。

国内ゴルフ場で使用されるカートの大半は日本製でした。

しかも日本は、その当時すでに乗用車の輸出大国となっていて、カートを右ハンドルにするくらいの技術は持ち合わせていました。

そんな国内乗用カートの創世期は、ヤマハ製とダイハツ製が造られていて、ゴルフ場に限らず、当時はパビリオン内といわれたイベント会場でも移動手段として使われていました。

そこでは左ハンドルも右ハンドルもあったわけですが、ゴルフ場の事情で左ハンドルが生き残ることになります。

左ハンドルの理由はゴルフカートの収納スペース

日本にゴルフ場ができた頃から、芝生に対する畏敬の念は尋常なものではなく、まさに神様を扱うがごとく大事にしてきたものです。

カートが芝の上を走るなどというのは以ての外、まだキャディがバックを担ぐ時代だったので、そんな機械を入れるコースは三流というのが当時の考え方でした。

そのためカートを導入するコースが限られていたこともあり、全国のわずかなゴルフ場の考え方がカート製造に反映されます。

例えば海外製カートは、キャディバックは縦積みがスタンダードですが、国内カートは横積みが多くなっていました。

日本人の身長では縦向きにクラブを抜く大変だったことから横積みになったようです。

そしてカートを左ハンドルにしたのは、カートを収納するための車庫に関係があったのです。

当時のゴルフカートは、使用時以外は車庫に入れて保管していました。

使用するカートすべてを収納できる車庫となれば、クラブハウスに匹敵する大きさが必要です。

サイズの小さなカートであれば、それだけ車庫スペースも小さく済みます。

そのサイズの要望は、初期にカートを導入したコースから生まれたものだったのです。

左ハンドルのゴルフカートはアクセルペダルを設置しやすい

車庫にカートを収納する時は、すべて収まるように隙間なく詰めていきます。

両幅があるとその分だけ収納台数が減るので、スリムなものが良いわけです。

そしてカートが右ハンドルだと、アクセルペダルの分だけ右側に余裕スペースを作らなければなりません。

ゴルフカートは先端が短く、乗用車と違ってタイヤとの距離が近いため、タイヤを外側に出さない限り、アクセルペダルをセンター側に移動しなければなりません。

一方で左ハンドルにすると、アクセルペダルは当然中央側にあるので問題はなく、またブレーキペダルも右足で踏み込むので、右寄りに設置しても問題はありません。

つまり、もしも右ハンドルにすると、ペダルスペースを確保するために横幅を広げるか、もしくはノーズを長くするしかないわけです。

イベント会場で使われる台数から比べると、ゴルフカートの台数ははるかに多く、しかも車庫建設の費用を考えても、できるだけ小さな車庫にたくさんのカートを詰め込む、コンパクトなカートを要望したことで、左ハンドルの需要が増えていくのです。

マーシャルが使うエンジン式ゴルフカートは左ハンドルだった

やがて時代は「日本列島改造論」で、ゴルフ場造成ブームが到来します。

山岳コースの中には、とても歩いて1ラウンドをプレーするのは無理という高低差のあるコースがたくさん造られていきます。

コース内にベルトコンベアを設置して「動く歩道」を導入したり、エスカレーターを設置するコースもできてきました。

そんな中、海外でプレーした日本人ゴルファーの中には、乗用カートを要望する声が高まってきます。

そうは言っても日本のゴルフ界では、芝生保護は絶対的なものとして根付いていて、プレーのためにカートをコースに乗り入れることは難しい状況でした。

そんな中、ゴルフ界では空前のゴルフブームが到来し、猫も杓子もゴルフプレーやとなったわけです。

ルールもマナーも知らずとも、「社長」と呼ばれる人は、皆ゴルクラブを振る時代になり、進行の妨げとなってきます。

そこでゴルフ場はマーシャルカーを導入し、「注意する役」を設けることになります。

この時初期費用がかからない、外国産のエンジン駆動車を導入することになります。

もちろん外国製で左ハンドルだったのは言うまでもありません。

ゴルフカートの左ハンドルに違和感がなくなったワケ

オイルショックとともにゴルフ場造成は止まりますが、ゴルフブームそのものは加熱傾向となります。

キャディの人材が不足しはじめ、沖縄や北海道では海外リゾート地同様にゴルフカート主体のコースが徐々に増えていきます。

当時のゴルフ界は、キャディ付きが高級コースで、セルフは練習コースのようなイメージが広まっていました。

ところが乗用カートコースが認知されると、3泊4日のゴルフツアーを毎日ラウンドできる、1日に2ランドできると、ゴルフファンにとって人気のコースとなっていきます。

合わせてオフシーズンに海外でのプレーが珍しいものではなくなったこともあり、ゴルフ場では「アメリカンスタイル」として打ち出すようになります。

ただし、この頃の国産カートはまだ高く、1台が小型自動車並みの価格でした。

そこで海外のカートを輸入する業者が現れます。

価格は従来の3分の1ですから、一気に流れは変り、もはや「カートはアメリカ生まれの乗り物だから」と左ハンドルに対して、違和感なく受け入れるようになります。

ゴルフカートの左ハンドルは都市伝説的なルーツ?

ここまで色々お話してきましたが、ゴルフカートが左ハンドルなのは、「アメリカ生まれ」だからではありません。

元々はアクセルペダルの分だけ、横幅が広くならないようにするためのもので、駐車スペースの関係だったというのが理由です。

ちなみにバッテリータイプは毎日充電しなければならず、充電器が設置されている壁に前面から入れて収納することになります。

ただでさえ収納スペースが限られているのに、横幅の広いカートは自然淘汰されることになります。

そんなことで、しばらくはコンパクトなカートが主流でしたが、最近は4人(実質5人乗り)乗りカートが主流となってきているので、カートの台数も半分以下となって、ワイドタイプを現れてきています。

また2人乗りもボディの軽量化が進み、さらに芝を傷めないようタイヤが改良されて、コース乗り入れができるようになって来ています。

そしてゴルフ界も、カートがゴルフコースの入ることの是非を問う風潮はなくなり、コースメンテナンスでカバーすることが当たり前というように変わってきました。

そうしてこのあと控えているのが、2019年のルール大改正であり、その主眼は「プレーの迅速化」です。

カートを使えば1ラウンド4時間でプレーができるようになるので、ますます乗用カートコースは増えていくことでしょう。

ゴルフカートが左ハンドルから右ハンドルに変わる日

ゴルフ界の新しい息吹と思われたゴルフカートも、すでに国内ゴルフ場の半数以上が導入しています。

現在は海外製カートが圧倒的なシュアをもっていますが、ゴルフ場の経営が安定してくれば、また国内カートが主体となる日も近いのではないでしょうか。

そうなれば現在はワイドサイズのカートが導入されているので、左ハンドルから右ハンドルへ変わるのかもしれません。