日本女子プロゴルファー渡辺彩香選手といえば、女子プロの枠を超える飛距離が有名です。
ただ圧倒的な飛距離の持ち主であれば、絶対的に有利なはずなのに、戦績は足踏みが続いています。
そこで飛距離を追い求める渡辺彩香選手のスイングを解析して、問題点を探してみたいと思います。
渡辺彩香の飛距離はヘッドスピードの速さから生まれる?
女子プロゴルファーの飛距離ラインキングでは、常に上位にいる渡辺彩香選手ですが、ヘッドスピードは脅威の50が目前のようです。
ヘッドスピード50と言えば、松山英樹や石川遼といった飛ばし屋ゴルファーのランクです。
そこに女子プロが食い込んでくるのですから、その飛距離は注目の的となっています。
ツアーでもドライバーはコンスタントに270ヤードをマークしていて、本人も「女子には負けたくない」とさらなる飛距離アップを考えているようです。
そんな魅力的なドライバーショットを放つ渡辺彩香ですが、最近の戦績を見ると若干ペースダウンになっているようです。
2015年には億を超える賞金を手にして活躍していましたが、リオ五輪代表選手の選考に漏れてから、少し勝てない時期が増えてきたようです。
原因はパーオン率の低下と言われています。
パーオン率は規定(パー)から2打引いた打数でグリーンオンする確率です。
このパーオン率が下がるとバーディが獲れず、リカバリーでパーを狙うゴルフになってしまいます。
結果的に、人一倍の飛距離があるのにセカンドが乗らないことが、勝てない原因となっているようです。
女子プロの域を超える飛距離の持ち主 渡辺彩香
女子プロのトーナメントは、イーブンでホールアウトすると30位程度なので、まさに渡辺彩香の国内ランクキングと同じくらいです。
つまり飛距離はあっても拾うゴルフが主体になっています。
その原因はセカンドショットの精度が落ちているからですが、一方で良い位置でセカンドショットを打てていないこともその理由です。
これはドライバーの飛距離を追求したための弊害でもあるとも考えられます。
元々、渡辺彩香のスイングプレーンは斜めでした。
ところが飛距離を出すために円盤を立ててしまったのです。
トップの位置で左手首が折れるオーバースイングになっていて、この悪癖がショットの定まらない元凶だと思われます。
スイング全体が飛ばすことに固執しているために、クラブコントロールが難しくなっているようです。
プロゴルファーは毎年スイングを進化させているので、現在がその過渡期なのかもしれませんが、アウトサイドインの軌道でインパクトをすると、荒れ球になる確率は高く、繊細なショットに苦労することになります。
男子並みの飛距離を持つ渡辺彩香のスイングを分析する
男子並みのヘッドスピードと飛距離を持つ渡辺彩香ですが、スイングスタイルの現況を分析してみます。
まずドライバーを構える時は、ワイドススタンスで下半身を安定させます。
ハンドレイト気味にグリップを構え、アーリーコックでテークバックを開始します。
ハンドレイトとは、ボールよりも右側でグリップを握る構え方ですが、彼女の場合には右足に体重を乗せるために「ハンドレイト気味」になります。
ハンドレイトに構えるとアッパースイングが容易になり、ロフト角9.5度のドライバーでも理想的な14度の打ち出し角でインパクトすることができます。
テークバックは、両肩と両腕を一体に捻転しますが、極力下半身を使わないようにするのが特徴です。
左肩が90度回転しても、両腰は飛球線に対して平行を保つようにしています。
この腰の無回転に、渡辺彩香の飛距離の秘密が隠されていると言えるでしょう。
渡辺彩香の飛距離を生む大きなスイングとは?
「下半身を使って」とか「腰を使って」と野球の打撃をイメージした指導法はゴルフにもありますが、渡辺彩香のスイングは上半身の捻転、特に肩の回転を重視しています。
中心軸を定めて身体をねじることでパワーを蓄積し、そのねじりを開放すれば大きなエネルギーをインパクトで与えられると考えているようです。
その捻転とともに腕を高く上げて「大きなスイング」をイメージします。
トップのグリップ位置はまさに真上、本来は右肩の上にグリップが来るはずなのに、身体の中心軸まで上げます。
右手でグリップを左側に押すようにして、中心軸でトップの位置を固めて、この時、左腰の上(脇腹)を右側にせり出すと、スエーをせず軸を崩さないトップが完成します。
ここまでで重要なことは、右足を伸ばしたテークバックのあり方です。
右足を伸ばしても飛距離はアップしません。
あくまでも下半身を安定させて、上半身を捻転し、大きなスイングの準備をすることを意識した結果が右足に現れているだけです。
渡辺彩香の飛距離の秘密はビハインドザ・ボール
下半身で気をつけるのはつま先です。
渡辺彩香のダウンスイングは、両肩、両腕、両腰が飛球線と平行であることが基本です。
この形を崩さないことを大前提にして、ヘッドがインパクトゾーンに入るとつま先に体重を乗せていきます。
それまで右側に置いていて体重はわずかに移動して、アドレスの時の両足体重に戻っています。
ただしスイングによって右肩は回るため、頭(顔)も一緒に回していきます。
身体が正面を向いているので、顔をターゲット側に向けてもヘッドアップにはなりません。
顔を横に向けることで頭はその位置に残り、飛距離が最大限に生まれるビハインドザ・ボールの姿勢になるわけです。
ビハインドザ・ボールとは、ボールの位置よりも右側(後方)に頭を残してインパクトする姿勢のことです。
ヘッドを走らせることができるフォームなのですが、一方で上体がスエーして引っかけやプッシュの原因になったり、腰が故障する要因とも言われています。
特に渡辺彩香の場合には腰を回転しないのに、左足踵を浮かせずにベタ足でテークバックするため、腰への負担は相当なものと思われます。
渡辺彩香が飛距離300ヤードをマークできるスイングを考察
渡辺彩香の飛距離が出るスイングが分析できたわけですが、ではどこが問題なのでしょう?
同じようなスイングを観ると、過去にはアニカ・ソレンスタムがいましたし、現在では松山英樹がビハインドザ・ボールでショットしています。
アニカ・ソレンスタムは左足踵を浮かせて、柔らかいテークバックをしています。
松山英樹は膝を曲げてアドレスし、右腰を回したスイングをしています。
一方で渡辺彩香は、レクシー・トンプソンのスイングを、さらにアップライトしたものです。
渡辺彩香にとっては理想的に見えるスイングなのかもしれませんが、両肩と両腕のタイミングがずれると、身体が飛球線に正対することができずに、右肩で押し込むような姿勢でインパクトを迎えることになります。
300ヤードも夢のある話なので、追求してもらいたいものですが、左足の踵を浮かしてタイミングをとるか、下半身を強化して右ポケットにシワができるまで腰を回転させるかで、安定したショットを打てるようになれば、飛躍的なパーオン率になるのではないでしょうか。
渡辺彩香の飛距離をもっと伸びるためには
女子プロゴルファーは毎年サロンパスカップで飛距離を競っていて、どうしてもレクシーに勝てない渡辺彩香ですが、実はゆったりと振るイ・ボミとの差は7ヤードなので、ヘッドスピードを考えると、ミート率が落ちているような気がします。
やはり安定したスイングを極めたほうが今よりも飛距離は伸びるのではないでしょうか。