グリーンの速さ測定をする機械をスティンプメーターと言いますが、ゴルフ場ではグリーンの速さを芝の刈高で表示していることがあります。
またプレーヤー自身も「今日は何ミリ」と確認することもありますが、「刈高=速さ」ではないということを確認していきたいと思います。
グリーンの速さはスティンプメーターで測定する
グリーンの速さ測定が必要なのは、ボールの転がりを数値化するためです。
基本的には18ホールすべてのグリーンが一定の速さであることが求められます。
速い1番ホールと遅い10番ホールでは、プレーヤーはグリーンの速さを読み取ることができず、公平なセッティングとは言えません。
そこでコース管理者はなるべく同じグリーンの速さで仕上げるわけですが、その仕上がり具合を測定するのがスティンプメーターという器具です。
もっともスティンプメーターは器具というほど大げさなものではなく、長い定規にV字型のへこみがついていて、そこをボールが転がるようになっています。
V字型のへこみの端のほうに穴(ノッチ)があり、そこにボールを置いて片方の端を持ち上げて、ちょうど20度の角度になったところで、ボールは穴から転がり出てV字型のレールの上を転がっていきます。
そのままグリーン面を転がり、スティンプメーターからその距離を測定します。
一般的なグリーンの速さが9フィート、速いグリーンというのが11フィート、トーナメントグリーンは14フィート以上と言われています。
ちなみに9フィートはメートルに換算すると2.7メートルですから、ワンピンと呼ばれる旗竿の長さ7フィートよりも転がることになるので、遅いと言っても転がりがよければ難易度は高いと思います。
グリーンの速さ測定で「速い」と感じる数値とは
グリーンの速さ測定をしたときに、速いと感じるのは偶然ではありません。
グリーンの速さを出すためには、計画的な整備が必要になります。
まずは芝を育てることが必要です。
グリーンの芝にはたくさんの種類がありますが、大きく分けるとベント芝と高麗芝の2つです。
このベント芝は葉幅が細く高速グリーンに仕上げられますが、暑さに弱くしかも病気になりやすいことから育成していくことが難しい芝とも言えます。
基本的にはボールが転がるときの抵抗を低くするために、刈高を下げることが必要になるため、芝を強くする必要があります。
そのためには、まず密度の高い芝を作ることが必要です。
そのためには十分な施肥をして散水を切らさないようにします。
芝は栄養を吸収して根が張って、葉には勢いがつきますが、そのままではグリーンは遅くなってしまいます。
そこで刈高を下げていきますが、一気に刈高を下げると枯れてしまうので、徐々に刈高を落とすことになります。
芝の葉先を全体の1/3~1/4以上切ると枯れてしまいます。
単純に4ミリの刈高でセッティングしていれば、3ミリに変えることができるような気がしますが、実際には早朝に刈った芝は夕方には成長していて、翌朝になれば5ミリを超えているはずです。
まして施肥した芝は勢いがあるので、それ以上伸びることも予定に入れておく必要があります。
グリーンの速さ測定数値と芝の刈高は比例しない
刈高が3.8ミリに達したら、グリーンモア(グリーンの芝を刈る機械)の刃を変える必要があります。
グリーンモアは鉋(かんな)のように1枚の刃がついています。
その刃が芝面に当たっていて、刃から出ている芝草の上部をスパイラル状の刃が回転しながらカットしていく仕組みです。
通常の刃のセッティングでは新聞紙を1枚刃に当てて、スパイラルの刃を回転させて切れる箇所、切れない箇所で調整していきますが、3.8ミリ以下になるとさらにその間隔は狭くなります。
そこでイメージとしては、「かんな」の刃を、カッターの刃のような薄いものに交換します。
もちろん薄い刃は高額ですし、しかも耐久性のない使い捨てのようなものです。
3.3ミリ程度になると一度にたくさん刈り込むことのないように、朝・夕の2回に分けて刈ることになります。
また肥料焼けを防ぐために、わずかな散水をこまめに施すのみで、あとは刈高を下げた大会期間中だけの栄養は、根に貯めた肥料で生きながらえることになります。
ですから一般的なゴルフ場において日常のコースセッティングでは、「リアル3.3ミリ」でカットすることはありえないと思ったほうがいいと思います。
またグリーンの速さ測定をせず3.8ミリとだけ表示されていたとしても、速さを測定した数値が表示されていないと本当の意味での速さは分からないと思います。
9フィートと測定されたグリーンの速さにも違いがある?
短く刈らなくてもグリーンの速さ測定をすると9フィートを超えていることがあります。
実はグリーンの速さを左右しているのは刈高だけではないのです。
ちなみにスタート室の前に「本日の刈高は・・・・・・」と表示されているのを目にしたことがあると思いますが、基本的には手刈りのグリーンモアであれば最低でも4台は稼動していて、6台程度で刈り込むのが一般的です。
そのすべての機械の刈高をセッティングするとなると大変なことなので、通常は春・夏・秋・冬にわけて年間4回程度で刈高変更をします。
つまり実質上は、ほぼ毎日が「本日の刈高」になっているわけです。
グリーンの速さはボールの転がりと深いかかわりがあり、芝のカットも葉先の抵抗を少なくするためのものなので、極端に言えば芝がほぼないグリーンは速い場合があります。
転がりを良くするには、粒子の細かな砂を撒き、大きな歯ブラシのようなものでこすって葉の間に砂を刷り込み、さらに散水してその砂を落ち着かせます。
余分な砂はグリーンモアで芝と一緒に刈り取り、最終的にローラーをかけて下地が平らなグリーンに仕上げます。
これを繰り返すことでグリーン面は締まり、硬くて速いグリーンが測定できるわけです。
ダブルカットのグリーンの速さ測定は数値以上に速く感じる
転がりの良さについては、カットの仕方によっても変わります。
通常のゴルフ場のグリーン面は1つ600平方メートル程度で、機種にもよりますが刃幅は60センチ程度です。
24メートル角の四角形と考えれば、24メートルを20往復することになります。
これがシングルカットですが、交差するようにもう1度横のラインで20往復カットするとダブルカットになります。
一般的なグリーン面がシングルカットのときはゼブラカットになりますが、ダブルカットは格子状の模様ができます。
もちろんダブルカットのほうがグリーンの速さが増しますが、それには2つの理由があります。
1つ目は刈残しがなくなることです。
グリーンモアは20センチ幅のドラムが回転しているので、60センチの中に細かな起伏があると刈残しができます。
ところが方向を変えて刈り込むと、その刈残した芝を無くすことができます。
2つ目は葉先が起きることで正確な刈高になることです。
もともとグリーンの葉は一定の方向に伸びていて、いわゆる順目や逆目があります。
そこにシングルカットでゼブラ模様がつくと言うことは、葉先がグリーンモアの刃に合わせて流れを変えたからです。
つまり葉先がグリーンモアの進行方向に流れて、その分だけ刈り込みが足りなくなっています。
ですからリアル刈高にするには最低ダブルカット、もっと速くしたければトリプルカットにすれば4ミリでもグリーンの速さ測定が正確にできるはずです。
測定値よりもグリーンの速さを一定にすることが大事
グリーンの速さ測定をすることで大切なのは、「速くする」ことではなく「一定」にすることです。
18面のグリーンと、ティーグラウンド付近にある練習グリーン、もしかするとハウスのバッグ置き場の近くにも練習グリーンがあるかもしれませんが、そのすべてのグリーンの速さを測定して一緒になるようにすることが大切です。
そして肝心なことは1面のグリーンの中でも一定の速さが必要です。
これは順目の速さとか傾斜の速さと言うことではなく、その条件が加わったときにはそれなりの速さを感じて打つことができるグリーンが一定の速さということです。
ちなみにグリーン面で傷みが激しいところは、次のティーグラウンドに向かう道となっているところです。
傷んだところは芝の密度が薄く、イレギュラーな転がりがあるかもしれませんが、抵抗が少ないため、グリーンの速さを測定するともっとも速い箇所になるかもしれません。
逆にいうと傷みが激しい箇所にはカップを切らないので、次のグリーンの位置が確認できれば、ある程度の狙い目は定めることができると思います。
いずれにせよ「刈高=速さ」ではなく、一定の転がりこそが重要なことなのです。
グリーンの速さを測定するスティンプメーターには裏面がある
グリーンの速さを測定するスティンプメーターには表と裏があり、表は一般的な距離を測定しますが、現在のグリーンはポテトチップスのようにアンジュレーションが強く、測定不能と言うこともありえます。
そこで裏面のノッチは半分の距離が転がるようにしているので、起伏の激しいグリーン面でも対応できるようになっています。