ゴルフ市場が縮小傾向へと推移している現状と今後について

最終更新日:2018/08/27

ピークのころから比べると、ゴルフ業界の市場規模は減少傾向で推移しています。

景気回復の兆しもあって、ゴルフ場の客足が伸びつつあるとも言われているようですが、400コースが廃業していて小さなパイを取り合っている状況です。

そこで、ピーク時から斜陽となるまでのゴルフ業界と、今後目指していくものについて考察していきます。

市場規模が縮小で推移しているゴルフ界を利益で確認

「ゴルフ場が儲かる」と考える人は少ないと思います。

ひと昔前なら高額会員権を100億円や200億円分発行して、お金を集めてからゴルフ場造成を始めていましたから、それなりの旨味もあったはずです。

対して現在はその会員権自体が売れませんし、例え売れたとしても低額になっているので、とてもゴルフ場の造成費用を見込むことはできません。

初期費用が仮に100億円であったとして、毎年1億円の利益が出たとしても、回収するには100年間もかかることになります。

その間にハウスの補修など考えると、とても投資額の1%程度の事業に新規参入することはないはずです。

しかも収益がでるのは、限られたわずかなゴルフ場だけで、1億以上の利益を出したゴルフ場(法人)は10社しかありません。

そのうち2社は100コース以上を保有するファンドですから、大半のコースは数千万円の利益を推移していくだけでも精一杯なのがゴルフ市場の規模ということになります。

ゴルフ界の歴史を知れば市場の推移は理解できる

ゴルフ業界の市場規模が縮小を始めたのは、あのバブル崩壊からのことです。

実態のない「会員の権利」が数千万円、中には億単位で個人売買されるようになったのは、リゾート法によって日本全国にたくさんのゴルフ場が造成されたことによるものです。

それまでもゴルフ場の会員には希少価値があることから、一部の愛好家間で高額取引は行われていました。

しかしまったくゴルフをしたことがない人達までもが、「会員権は値上がりする」と投資目的で購入を始めたのは、このバブル期の特徴だったわけです。

プレーをしない人がゴルフ場の会員になるのですから、買値よりも高く売却しようと考えるのは当たり前のことです。

購入代金に上乗せして回収するのが投資ですから、この考え方自体は間違っていなかったのでしょう。

ところがバブル崩壊ともに、値上がりで推移していた会員権価格はストップします。

売りたくても買値以下では損切りになってしまいます。

そこで預託金返還までは様子見することにしますが、預託金も含めて会員権売却のお金は、すでにコースの造成費などで消えていて、返還する目処は立っていなかったわけです。

利用者数の推移から縮小するゴルフ市場を確認する

ゴルフ業界のピーク時には、日本全国に2400以上のコースが造成されました。

当時の入場者数は、あとわずかで1億人というところまで増えていて、まさに「ネコも杓子も」ゴルフに興じていたわけです。

予約が取れずスタート係に「高級時計を贈った」なんて話が飛び交うバブル期が終焉すると、毎年1千万人ずつ入場者数が減少していきます。

ゴルフ市場では入場者の減少を食い止めるために、それまでの高級志向を維持しつつも、二重価格で枠を埋めようとします。

結果的にオープンに値引きを提示したところに需要は流れて、「低価格=ノーキャディ」のコースへと推移していきます。

セルフコースを軽んじていた時代は過ぎ去り、顧客の志向が一気に変わったことで、多くのゴルフ場は乗用カートを導入してセルフプレーのラウンド形式を取り入れていきます。

格式にこだわったゴルフ場や、高額会員権の整理が進まずに大衆化できないゴルフ場は、時代から遅れていき法的整理を待つだけの状態となります。

ゴルフ市場が安定しないのは不良債権処理の遅れが原因

ゴルフ会員権の預託金返還時期が迫る中、会員からの償還確認なども増えてきたことから、任意での償還延長などを模索していましたが、一方で経営責任を問われずに再生できる民事再生法が作られたことで整理を行うところもでてきます。

当初は10%程度の債権を残して、預託金90%カットなどが主流案でした。

ところが全国で預託金返還騒動が起こり、ゴルフ場の経営責任を明確にした上で95%カットして返還すると言った経営交代が主流となります。

ハゲタカファンドなどと揶揄されながらも、不良債権を一気に解消していくことで、市場は落ち着きを取り戻していきます。

ただし会員権市場では売買価格が冷え込んでおり、またプレー代の低価格路線も確立していることから、ゴルファーはあえて会員権を取得する意味がなくなっています。

こうなると新規参入するゴルフ場経営者も限られてきます。

ゴルフコースの売買は儲かりませんし、会員権を発行しても初期投資額を回収できる見込みも低くなります。

さらにゴルフを志向するゴルフ人口自体が縮小傾向で推移している現状では、将来的な展望も見出せない状態となっています。

ゴルフ市場が規模縮小に推移している本当の理由とは

ゴルフ業界が縮小している中、構造的な問題もいくつか起こっています。

バブル期に当て込んだ新規コースは民事再生法の適用や、債権者である会員が任意団体を設立し有利子負債のない状態で運営にあたっています。

一方で、それ以前に造成されたゴルフ場は、民事再生することもできずに、市場の変化に対して競争することもできない状態です。

国民の税金で整理を終えたゴルフ場は低価格路線に転換したため、今度は名門コースも含めて歴史のあるゴルフ場が経営不振に陥ります。

ところが従前からの救済制度であった民事再生は事実上終結しているため、M&Aなどで生き残りをかけるしかありません。

歴史あるコースの現状をみると、会員数は満杯で新規会員権を発行できる環境にはなく、投下した資金を営業利益で回収できる見込みはありません。

結果として廃業することとなり、太陽光パネルの発電所として敷地を活用したり、自然に戻して草原や山林にしたりと、ピークから比べるとおよそ400コースが廃業することとなりました。

さらに都市部近郊のコースにとっては、最大の難関が発生しているため、今後は事態の推移を見守って、場合によっては多くのコースが廃業する可能性があります。

ゴルフ市場が上昇に推移するためには行政の環境整備が必要

ゴルフ業界の市場規模は縮小傾向にあり、今後ますます厳しい時代がやってきそうな気配となっています。

構造不況業種であり、いわゆる右肩下がりの斜陽産業であるゴルフ場は、1コース当たりの入場者数や売上高が減少傾向で推移していて、今後設備の更新が難しい状況になっています。

現在を維持しているだけで精一杯の状態でありながら、本州の都市部近郊のコースは貸地でゴルフ場を運営しています。

地主に賃料を払えないと地主は固定資産税を払えず、強制的に売却されることになります。

さらにその地主が亡くなると、今度は遺族が相続税を払えず、ゴルフ場には買い取る資力がないことから、コースやハウスが使用できなくなり、閉鎖することになってしまいます。

固定資産の評価は各自治体が定めているため、中にはクラブハウス周辺の地主に宅地並みの相続税が課せられて、納税することができない状況に追い込まれている場合もあるようです。

ゴルフ場の課税については、1つの課税対象に消費税とゴルフ利用税の間接税二重払いや、近傍森林地と格差のある評価額など不合理な税制などの問題もあり、政治や行政が根本的な解決策を講じない限り、この構造不況を脱することは難しいかもしれません。

ゴルフ市場を安定に推移するための秘策とは?

ゴルフ場を利用するために会員権を購入していた時代から比べると、現在はだれでも利用できる環境が整ってきています。

ただゴルフ場として維持していける収入であるかと言えば、それは限られた数コースしかないのも現状です。

市場拡大を狙うよりも個々の満足度を高めて、ゴルフ場にとって利用額が適正に推移できるようにしていくことが、生き残っていく上で必要なことではないでしょうか。