ゴルフスイングにおける体幹運動と腰痛の関係を詳しく紹介

最終更新日:2017/03/26

ゴルファーの多くが腰痛を経験しており、某有名PGAツアー選手も腰痛によりプレーを継続できない状態に追い込まれています。

ゴルフスイングでは体幹の運動が非常に重要ですが、腰痛も適切な体幹の安定性が重要です。

この共通点からゴルフに必要な体幹運動を鍛えながら腰痛を予防する方法を解説していきます。

ゴルフスイングに必要な体幹の運動

いろいろなスポーツの中でもゴルフは体幹のスポーツと言われる通り、美しいゴルフスイングには体幹の運動が必要不可欠です。

特にヘッドスピードと関係する骨盤と胸郭の捻転差(X-factor)が重要で、背骨の分節した回旋運動がスイングを美しく見せるポイントといえます。

実際にはこの回旋運動の他に、前後屈や側屈の運動も加わった複合的な運動が必要です。回旋だけではボールを遠くまで飛ばすだけの力がないからです。

体幹がこのように複雑な運動が可能である理由としては、背骨にあります。
背骨は正式には脊柱(せきちゅう)と呼ばれ、首にある7個の頸椎(けいつい)、胸にある12個の胸椎(きょうつい)、腰にある5つの腰椎(ようつい)、お尻にある仙骨(せんこつ)と尾骨(びこつ)が積み木のように並んでいます。

この中で体幹の運動と関係するのが胸椎と腰椎です。

それぞれの骨の間には椎間板(ついかんばん)と左右ひとつずつの関節があります。

このようにたくさんのジョイントがあることで、ゴルフスイングのような体幹の複合的な運動が可能となっています。

ゴルフスイングと腰痛について

体幹の複合的な運動が可能である分、プロ・アマ問わずゴルファーの多くが腰痛や背部痛を訴えています。

ただし、腰痛というのは腰部に痛みが出現するという症状のことであり、腰痛を訴えるゴルファーのどの組織にダメージがあるのか、何が腰痛を引き起こしているのかということまでは個人差がありますので正確には病院で診察をしないと分かりません。

例えば、腰痛を引き起こす疾患には、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間関節症、変形性腰椎症、腰椎分離症、筋筋膜性腰痛などたくさんあります。
それぞれ画像診断により組織にダメージが認められればこのような診断名がつけられます。

ただし、画像診断でもダメージが認められない場合は、非特異的腰痛または単に腰痛症という診断となります。
そして、腰痛患者のうち、8割がこのダメージが認められない非特異的腰痛と報告されています。

このことから、ゴルフスイングによる腰痛がなぜ起こるのかは不明ですが、腰部の組織に負担がかからないようにすることが重要と言えるのは間違いありません。

股関節と腰椎の関係

ゴルフスイングの体幹運動の主となる運動は、何と言っても骨盤と胸郭の回旋です。

骨盤の回旋は、リード側(右利きゴルファーの左側)の足底面が床反力を受けることにより起こります。
そのため、実際にはリード側股関節の内旋(内側への回旋)運動により引き起こされています。

ここで股関節に可動域制限があると、骨盤が上手く回旋できず、腰椎に回旋ストレスが加わることになります。

腰椎にある関節は前後屈には動きやすい形状をしていますが、回旋方向には動きにくい形状をしており、回旋ストレスが加わると関節を損傷する原因となります。

もちろん、骨盤が回旋できないとせっかくの床反力が利用できず、上半身だけの力でスイングすることになるため、大きく飛距離を損なうことになります。

股関節の可動域を広く保てるようにお尻についている大殿筋(だいでんきん)のストレッチが重要になってきます。

胸郭と腰椎の関係

胸郭とは胸椎に肋骨(ろっこつ)と胸骨(きょうこつ)を合わせた複合体のことを言います。
腰椎は回旋運動が苦手と先ほど述べましたが、胸椎は逆に回旋運動が得意で、前後屈運動が苦手な関節の形状をしています。

体幹の回旋は骨盤に対する胸郭の回旋ですが、主として胸椎の関節で起こっています。

ただし、肋骨や胸骨とも関節しているために、その運動には制限があります。
特に肋骨が広がりにくい状態では、胸椎の回旋は著しく制限されます。
股関節と同様に、胸椎の回旋制限は腰椎に回旋ストレスを生じる原因となります。

また、骨盤に対する胸郭の捻転差であるX-factorはヘッドスピードと関係しており、胸郭の可動域制限もまたゴルフスイングの妨げとなり、飛距離を大きく損なう原因となります。

肋骨の広がる運動を制限する要因としては、腹筋群の緊張があります。
腹筋群をストレッチして、胸郭の可動域が広く保てるようにする必要があるでしょう。

体幹を安定化させるインナーマッスルがスイングをスムーズにする

先ほど述べた大殿筋と腹筋群のストレッチをすることによって、股関節と胸郭の柔軟性を保つことができれば、ゴルフスイングにおいて体幹の複合的な運動がスムーズに行えると考えられますが、緩めるばかりでは関節の不安定性を招きかねません。

骨盤の関節である仙腸関節(せんちょうかんせつ)をはじめ、関節の不安定性は痛みと関係することが報告されています。

そこで、体幹の関節を安定させるのがインナーユニット(コアマッスル)です。
インナーユニットは腹横筋(ふくおうきん)、多裂筋(たれつきん)、横隔膜(おうかくまく)、骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)の4つのインナーマッスルを合わせた総称です。

インナーユニットは仙腸関節や体幹にある関節の安定性を高める役割があります。
特に腹横筋は天然のコルセットと言われ、お腹まわりをぐるりと取り囲むように位置していて、お腹を凹ますことで体幹を安定させる働きがあります。

腰痛の運動療法にもインナーユニットの強化が取り入れられているほど重要な働きと言えるでしょう。

ゴルフで誰もが欲する飛距離を伸ばすアウターマッスル

体幹の関節が安定していれば、思い切って体幹を動かせます。
つまり怪我を恐れることなく、ゴルフスイングを行えるということです。

ここで、体幹の運動を行う役割が腹直筋(ふくちょくきん)、腹斜筋(ふくしゃきん)、広背筋(こうはいきん)、脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)などのアウターマッスルです。
特に腹斜筋と広背筋は体幹回旋運動の主動作筋です。

腹筋群の緊張は肋骨の運動を制限すると述べましたが、十分な柔軟性があるうえにインナーユニットが体幹を安定させてくれれば何も問題ありません。
大きなX-factorを作り、打球方向に捻じり戻すためにもこれらのアウターマッスルは欠かせないのです。

飛距離のために身体を鍛えるというのであれば、まずは腹斜筋と広背筋を率先して強化することをオススメします。
また、ゴルフの練習中に腰が張ってきたと感じた場合は、これらの筋群をストレッチすることが必要となるでしょう。

皆さんはストレッチを定期的にしていますか?
練習やラウンド前に大して時間をかけず、パパッとストレッチをしてすぐスイングを行っていませんか?

ここまで読んで自分の体を見直すきっかけになれば幸いです。

ゴルフの上達を目指しながら腰痛を予防

ゴルフの上達には股関節と胸郭のストレッチ、体幹のインナーマッスルとアウターマッスルの強化が重要ですが、これらは腰痛のリハビリテーションに用いられるメニューと全く同様です。

つまり、腰痛のリハビリ、または予防としてストレッチやトレーニングを行っていればゴルフスイングも上達することが考えられます。

反対に、こうした運動をせずに練習ばかり繰り返してもなかなか上達しないばかりか、腰痛を引き起こして思い通りに動けず、かえって下手になる可能性もあるといえるのです。